2015 Fiscal Year Annual Research Report
プロトンと電子が相関した水素結合ユニット型純有機伝導体の開発と機能開拓
Project/Area Number |
26810044
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 顕 東京大学, 物性研究所, 助教 (20589585)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有機伝導体 / 水素結合 / TTF / 電子ドナー分子 / π拡張 / 電荷秩序 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である2年目は、水素結合ユニット型有機伝導体の開発研究をさらに進展させるべく、1)前年度に合成に成功したπ拡張体ND-EDT-TTFを基盤とした新規水素結合ユニット型有機伝導体の結晶構造のさらなる調査、2)設計したもう一種類のドナー分子Cat-TTPの合成検討、および3)エチレンジオキシ体Cat-EDO-TTFからなる水素結合ユニット型有機伝導体の新規類縁体の作成、構造物性調査を行った。 まず、1)については、実験室系での構造解析実験から、ドナー分子間に特異な水素結合が存在していることが示唆されていたが、R1値が高く、より詳細で精密な構造データを得るために、本年度、放射光を用いた構造解析実験を試みた。その結果、R1値は大きく改善され(R1~6%)、特異な水素結合が多数形成されていることが確認でき、さらに、この特異な水素結合によって電荷秩序化が発生していることも示唆され、大変興味深い。ただし、水素結合プロトンについては、熱的なディスオーダーのためか、完全には解析できておらず、より低温下での実験を行う必要があると考えられる。 また、2)については、前年度の知見を基に、分子の溶解度の向上を目的として、シクロヘキシル基の代わりにアルキルチオ基を導入した誘導体の合成を試みたが、残念ながら、目的物の合成に至っていない。 このように、2)の合成実験の困難さが考えられたので、その代替案として申請書に記載した上記3)の研究を遂行した。母体におけるBF4アニオンをClO4やPF6, AsF6に置換した新規類縁体の合成に成功し、構造や物性を系統的に比較した。大変興味深いことに、BF4塩のみ構造相転移を起こし、分子配列が劇的に変化した。詳細な考察から、この相転移は水素結合とπ電子系が相関した結果であることを明らかにした。
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Research Products
(31 results)