2014 Fiscal Year Research-status Report
周辺側鎖を駆動力とするπ電子積層様式の制御と光電子機能材料の開発
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26810049
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
櫻井 庸明 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50632907)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ディスコチック液晶 / カラムナー相 / 非混和性 / 疎水鎖 / 親水鎖 / 超疎水鎖 / 有機半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、疎水鎖と親水鎖とで位置特異的に修飾されたぺリレンジイミドおよびナフタレンジイミド誘導体の合成を行い、その液晶挙動を調べた。 ペリレンジイミドN位の双方を3,4,5-トリドデシロキシベンジル基(疎水鎖)で修飾した誘導体は既報と同様に、ヘキサゴナルカラムナー相を発現した。新規に合成したN位双方が3,4,5-トリス(トリエチレングリコール)ベンジル基(親水鎖)で修飾した誘導体もヘキサゴナルカラムナー相を発現した。これに対し、一方のN位を上記の疎水鎖、もう一方を親水鎖で修飾した誘導体は、高温領域ではヘキサゴナルカラムナー相を発現するが温度低下に伴い相変化しレクタンギュラーカラムナー相を発現した。X線構造解析の結果、レクタンギュラー相においては疎水鎖同士・親水鎖同士が噛み合うことでx-y方向にラメラ構造を、z方向にはπスタック相互作用によりカラム構造を形成することがわかった。この結果は、互いに混和しにくい二種類の側鎖を位置特異的に修飾で、π共役系分子を自発的に高秩序なカラムナー相形成へと誘導することが可能であることを示している。 事実、ベンゼン環部位の導入によりさらに分岐させ、1ユニットあたり6本の側鎖から構成された置換基で修飾した同様のペリレンジイミド3種類を合成したところ、疎水性誘導体は側鎖体積の増大から高温でミセルキュービック相を発現し、親水性誘導体では結晶化が促進したのに対し、位置特異的に修飾した誘導体ではレクタンギュラーカラムナー相を発現した。この傾向は、側鎖体積を大きくするのではなく分子骨格をナフタレンジイミドへと小さくした3種類の誘導体においても顕著であった。 結論として、π共役系分子から側鎖を駆動力としてカラムナー相を形成するための普遍的分子設計指針を開拓した。カラムナー相の構築は一次元電荷キャリア輸送を示す有機半導体としての応用展開が可能という点で重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予想していた、非混和性側鎖の導入によるπ共役系骨格の回転角の制御は少なくともペリレンジイミド系では達成できないことがわかった。しかしながら、本研究で用いている側鎖設計により、カラムナー相発現のための普遍的な分子設計指針を示せたという点で研究の進展としては順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で用いた側鎖の設計は、”側鎖によるラベリング”という新しい概念を生む可能性がある。すなわち、AとBという異種分子骨格を混合した際に、Aは疎水鎖だけで、Bは疏水鎖・親水鎖で修飾すると、AとBは混和こそするがナノレベルでは相分離するという新しい概念である。この実証を目指すべく二年目は研究展開を行う予定である。
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Causes of Carryover |
予定していたよりも試薬類を使わずに対象化合物を合成できたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は学会発表、論文投稿を積極的に行っていくため、その費用に企てる予定である。
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Research Products
(3 results)