2014 Fiscal Year Research-status Report
分子極性チューニングに基づく光応答性機能材料の創成
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26810050
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
酒田 陽子 金沢大学, 物質化学系, 助教 (70630630)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光応答性分子 / ジピリノン / 置換基効果 / 熱可逆性 / 水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生体内色素分子であるビリルビンの構成単位であるジピリノンを基盤とした新しい光応答性分子ユニットの新規開発ならびにその分子ユニットの光照射に伴う極性チューニングを利用した集合構造および機能制御を行うことを目的としている。平成26年度は、種々のジピリノン誘導体を合成し、その光化学的性質の追跡を行った。特に本研究では、ジピリノンのピロールアルファ位に様々な置換基を導入した誘導体の合成を行い、クロロホルム中におけるZ体からE体への光異性化率について400 nmの可視光照射を行い検討した。その結果、ベンジルなどの電子供与性部位を導入したジピリノン誘導体では、光異性化率が低かったのに対し、アセチル基やエステル基のような非芳香族性の電子吸引基を導入する事で、58%まで光異性化率が大幅に向上する事を見出した。この光異性化率はこれまでに報告されているジピリノン誘導体の中で最高の値であった。また、エステル置換体はクロロホルム中において、光照射によって生じたE体からZ体への熱戻り反応が起こることを見出し、熱可逆的なT型の光応答性分子であることが明らかとなった。さらに興味深いことに、エステル置換体のメタノール中における、光異性化挙動についても追跡したところ、Z体からE体への光異性化率が71%まで向上した。熱戻り反応についても追跡したところ、メタノール中においては、光照射によって生じたE体はZ体への熱戻りが起こらなかった。一方、紫外光を照射することで、E体からZ体への逆異性化反応を引き起こすことができ、可視光と紫外光を交互に照射することで、Z体とE体間の相互変換を繰り返し行う事にも成功した。このように、エステル体はメタノール中において、熱不可逆的なP型の光応答性分子としてふるまうことを見出し、溶媒によってT型とP型が変換可能な新規な光応答性分子を開発することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去にジピリノンに関する光異性化挙動についての報告が殆ど無いため、種々のジピリノン誘導体を合成し、最も高いパフォーマンスを示すジピリノン誘導体に関しての設計指針を得ることが本研究の第一段階であるが、平成26年度の研究により、エステル基やアセチル基などの非芳香族性の置換基を導入する事で、高い光安定性および高い異性化率を示すジピリノン骨格を得る鍵となることを見出した。また、このような構造最適化に留まらず、当初の計画では予想していなかった結果として、溶媒によって異なる光応答性挙動を示すデュアルモード型の光応答性といった新しい現象を発見することも出来た。すなわち、光異性化によって生じた速度論的生成物であるE体は、クロロホルム中では熱平衡により熱力学的に安定なZ体に戻るのに対し、メタノール中では、E体は速度論的に安定化されており、Z体には戻らないことを見出した。溶媒によって逆反応の速度が制御可能であることから、これは任意のタイミングで異種の溶媒を添加することなどで、能動的に色調の精密制御が可能であることを示しており、今後、新規な色素材料開発などの実用面での応用も期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、種々のジピリノン誘導体を合成し、その光応答性について検討した結果、ピロールアルファ位にエステル基を導入する事で、高い光安定性および高い光異性化率を示すといった新たな知見を得る事ができた。今後は、生体内色素分子であるビリルビンを模倣し、ジピリノン誘導体とカルボン酸との結合の有無について探索する。Z体の無置換のジピリノン分子に関しては、二分子が向かい合い、相補的な水素結合を形成することが、またジピリノン一分子はカルボン酸分子と水素結合を形成することが知られている。そのため、今後は合成したジピリノン誘導体のうち、特に異性化率の高かったエステル基に関して、溶媒に依存した溶液中におけるカルボン酸との会合の強さをNMRスペクトルやUV-Visスペクトルなどの各種分光測定を用いて定量的に評価する。始めは、安息香酸などの最も単純なカルボン酸について検討する予定である。また、二つのNHプロトンが逆方向を向くE体では同方向を向くZ体よりも、カルボン酸の捕捉能は低いと予想されるため、それぞれの会合定数を比較することで確認する。また、カルボン酸存在下においても同様に高い異性化率が保持され、光照射前後で疎水性と親水性が変換可能な目的の極性変換型の分子モジュールとして働くのかを確かめる。さらには、ジピリノン部位に自己集合を誘起する色素部位などを導入し、超分子構造を形成することで、光応答性材料としての可能性を探索する。
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Causes of Carryover |
次年度は、本研究を遂行するにあたり重要な過程である、ジピリノン誘導体の合成の効率化を図る上で有用な自動精製装置を購入予定のため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越し額と次年度予算とを合算することで、自動精製装置を購入予定である。これにより、ジピリノン誘導体合成の際の精製時間の大幅な短縮が見込まれ、効率的な研究遂行が可能になると期待される。
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[Journal Article] Oxidation Reactivity of a Structurally and Spectroscopically Well-Defined Mononuclear Peroxocarbonate-Iron(III) Complex2015
Author(s)
Tomohiro Tsugawa, Hideki Furutachi, Megumi Marunaka, Taichi Endo, Koji Hashimoto, Shuhei Fujinami, Shigehisa Akine, Yoko Sakata, Shigenori Nagatomo, Takehiko Tosha, Takashi Nomura, Teizo Kitagawa, Takashi Ogura, and Masatatsu Suzuki
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Journal Title
Chemistry Letters
Volume: 44
Pages: 330-332
DOI
Peer Reviewed
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