2016 Fiscal Year Research-status Report
金属化学種の付加による有機金属種の触媒的生成を鍵とする交差カップリング反応の開発
Project/Area Number |
26810058
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
仙波 一彦 京都大学, 工学研究科, 助教 (30712046)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ヒドロアリール化 / アリールホウ素化 / クロスカップリング / アルキン / アルケン / 金属協働触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,金属化学種の不飽和化合物への付加による有機金属種の触媒的生成を鍵とする交差カップリング反応の開発を目的としている。本年度は,ヒドロアリール化およびアリールホウ素化反応を環境調和型の反応へと発展させることを目的として検討を行なった。その結果,パラジウム/銅協働触媒による水素を還元剤とするヨウ化アリールとアルキンの還元的クロスカップリング反応とニッケル/銅協働触媒によるアルケンのアリールホウ素化反応の開発に成功した。詳細は以下の通りである。 前年度に予備的に見出していたパラジウム/銅協働触媒による水素を還元剤とするヨウ化アリールとアルキンの還元的クロスカップリング反応における反応条件の最適化を行い,得られた最適条件のもとヨウ化アリールおよびアルキンの基質適用範囲を調査した。その結果,本触媒系は種々のジアリールアセチレン誘導体に適用可能であり,様々なトリアリールエテンが中程度から良好な収率で得られた。 アルケンのアリールホウ素化反応に関しては,これまで用いていたレアメタルのパラジウム触媒をベースメタルのニッケル触媒へと置き換えることに成功した。さらに,これまでは5.0 mol%必要であった銅の触媒量を1.0 mol%まで低減することにも成功した。本ニッケル/銅協働触媒系を用いることで,これまでに開発したパラジウム/銅協働触媒では適用できなかった,フェノール誘導体のp-トルエンスルホン酸アリールを求電子剤として用いることが可能となった。フェノール誘導体は豊富に存在し,ハロゲン含有の副生成物を排出しないより低環境負荷な求電子剤である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,これまでに開発したヒドロアリール化およびカルボホウ素化反応を環境調和型の反応へと発展させることを目的としていた。ヒドロアリール化に関しては,これまで必要であったヒドロシランを水素に置き換えることができたため,原子効率の面で大きな改善に成功した。カルボホウ素化反応に関してはレアメタルであるパラジウム触媒をベースメタルであるニッケル触媒に置き換え,また求電子剤の臭化アリールをフェノール誘導体であるp-トルエンスルホン酸アリールへと置き換えることで,低環境負荷な反応へと発展させることに成功した。以上の理由により,本年度の研究は概ね順調に進展したと判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度までに見出したパラジウム/銅協働触媒による水素を還元剤とするヨウ化アリールとアルキンの還元的クロスカップリング反応の論文発表を行う。また,予備的に見出したアルケンのカルボアリル化の条件の最適化を行い,基質適用範囲を調査し,論文発表を行う。
|
Causes of Carryover |
水素を還元剤とするパラジウム/銅協働触媒によるアルキンのヒドロアリール化反応の反応条件の最適化および基質適用範囲の調査に予想以上に時間を要してしまい,論文発表を行うことができていないため。また,新たに見出したアルケンのカルボアリル化反応を詳細に調査するため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
パラジウム/銅協働触媒による水素を還元剤とするヨウ化アリールとアルキンの還元的クロスカップリング反応については,論文審査後に必要となる追加実験のための消耗品購入に使用する。また,アルケンのカルボアリル化については反応条件の探索のための消耗品購入に使用する。
|