2015 Fiscal Year Research-status Report
絶妙なルイス酸性を活用したエノール誘導体を求電子剤とするカップリング反応の確立
Project/Area Number |
26810059
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西本 能弘 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30550115)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | カップリング反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
クロスカップリング反応は有機化学において、炭素ー炭素結合を形成させるための最も重要な手法の一つであり、様々な医薬品や機能性材料の合成に利用されている。一般的に、求電子的なカップリングパートナーは有機ハロゲン化物が用いられるが、有機ハロゲン化物は高価であり、潜在的な毒性も危惧されるために、アルコールやエノール誘導体の利用が望まれてきている。そのような背景の中、本研究ではエノール誘導体の一つであるエノールエーテルを用いたカップリング反応の確立を目指し、検討を行った。その結果、臭化インジウム触媒存在下、エノールエーテルとシリルケテンイミンとのカップリング反応が効率よく進行することを見出した。本反応には、様々なエノールエーテルとシリルケテンイミンが適用可能であり、一般性の高いα-アルケニル化ニトリルの合成法として確立できた。触媒としてはインジウム塩が特異的に効果があり、他の典型的なルイス酸であるフッ化ホウ素や塩化アルミニウムなどは触媒能を示さなかった。また、反応機構の解明も行った。添加剤として、トリメチルシリルブロミドが非常に効果的であり、これは触媒再生を加速しているということがわかった。さらに、反応速度実験から、この触媒再生が律速段階であることも明らかにした。本研究で開発したカップリング反応を利用して、医薬品の一つである抗高血圧症薬ベラパミルの形式全合成を行った。市販のニトリルから二段階で合成したシリルケテンイミンを用いることで容易に鍵中間体の合成が可能であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標であったエノール誘導体を用いたカップリング反応を達成できたために、研究は順調に進展している。しかし、反応機構解明等をさらに詳細に行う必要があるため、研究期間延長を申請した。
|
Strategy for Future Research Activity |
エノール誘導体とシリルエノラートのカップリング反応の詳細な機構解明を行う。
|
Causes of Carryover |
開発したエノール誘導体とシリルケテンアセタールのカップリング反応の反応機構の解明やその後の展開を行う必要が生じたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
エノール誘導体とシリルケテンアセタールのカップリング反応の検討のための消耗品購入に充てる予定である。
|