2014 Fiscal Year Research-status Report
炭素-炭素結合を主鎖骨格とする立体規則性ポリβ-アミノ酸類の合成,構造および機能
Project/Area Number |
26810069
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高坂 泰弘 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (90609695)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | β-アミノ酸エステル / α-機能化アクリル酸エステル / ラジカル重合 / アニオン重合 / 立体規則性 / 刺激応答材料 / 高分子反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では重合活性なビニル基を側鎖に有するβ-アミノ酸エステル,α-(アミノメチル)アクリル酸エステル類の合成,重合ならびに生成ポリマーの特性について明らかにした. α-(アミノメチル)アクリル酸エステルのラジカル重合ではポリマーが効率よく得られる一方で,その1H NMRスペクトルのオレフィン領域に帰属不明の信号が出現した.重合反応の全容を明らかにするため,モノマーのみ,ポリマーのみ,および両者の混合物を重合条件で開始剤を加えずに静置したところ,モノマーのみ,およびポリマーのみの場合は全く変化が見られなかった一方で,両者を混合した際には,モノマーのエステル基がポリマーのアミノ基とエステル-アミド交換反応を引き起こすことが明らかになった.すなわち,同モノマーの重合では.単純なビニル基の連鎖重合に加えて,生成ポリマーと未反応モノマーの間にエステル-アミド交換反応が生じる,重合と高分子反応が併発するユニークな重合機構がわかった. 得られたポリマーのうち,エチルエステルは酸性水溶液中で下限臨界共溶温度を示すことを見出した.可溶/不溶の境界である曇点は,pHや対イオンによって変化した.このようなpH/温度応答性は異性体であるアクリル酸2-アミノエチルのポリマーでは観察されず,親水性基(アミノ基)と疎水性基(エステル置換基)が異なる炭素鎖に属するβ-アミノ酸型構造に特異な現象であることがわかった. 1級アミノ基をアリル基で保護したモノマーのアニオン重合では,イソタクチックポリマーが得られた.しかしながら,アリル基の脱保護を行うと,エステル-アミド交換反応が高効率 (80%以上)で生じ,溶媒不溶なポリマーとなった.この現象はイソタクチックポリマーに特有で,高い立体規則性がポリマーの安定性・反応性に強く寄与していることが明らかになった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
立体特異性重合に成功し,イソタクチックポリマーを得た.しかしながら,同ポリマーは反応性が高く,単離することは困難で,すぐに側基のエステル基とアミノ基が反応し,目標物とは異なる構造に変化した.イソタクチックポリマーが得られない点は予想外で,この点では当初の計画が頓挫したと言わざるを得ないが,もともとイソタクチックポリマーはアタクチックポリマーにはない立体規則性に基づく性質が現れると予想しており,ある意味では期待通りの結果であったと言える. 当初の計画には記載していなかったが,同ポリマーの構造決定を行う上で,立体不規則なアタックチックポリマーを対照試料として合成することになり,ラジカル重合について検討する課程で,ユニークな重合挙動を見出すに至った.また,生成ポリマーがpH/温度応答性を示すことが明らかになるど,予想外の発見もあった.
|
Strategy for Future Research Activity |
β-アミノ酸誘導体について,エステルではポリマーが不安定であることが明らかになったため,より安定なアミドで前年度と同様の実験を実施する.すなわち,α-(アミノメチル)アクリルアミドのアミド置換基に様々なアルキル基を導入し,そのラジカル重合,アニオン重合について,立体特性重合の観点から研究するとともに,pH/温度応答性も含めた生成ポリマーの特性について明らかにする.
|
Research Products
(3 results)