2014 Fiscal Year Research-status Report
発光性配位子とイオン液体を用いた有害金属の高効率抽出分離系の構築と分光特性の解明
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26810078
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
岡村 浩之 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究員 (30709259)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イオン液体 / 溶媒抽出 / 有害金属 / ランタノイド / 発光性環状配位子 / β-ジケトン / 疎水性中性配位子 / 協同効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
イオン液体は,室温付近でも液体として存在する塩であり,構成するカチオンとアニオンの組み合わせによって溶媒物性を調節することが可能な機能性溶媒である。イオン液体を溶媒抽出法における抽出媒体として利用した場合,その特殊な溶媒特性から,従来の有機溶媒系とは大きく異なる抽出挙動・分離特性を示すことが期待できる。本研究は,発光性環状配位子とイオン液体を用いた有害金属イオンの高効率抽出分離系を構築し,イオン液体に抽出された金属錯体の分光特性を解明することを主要な目的としている。本年度は,イオン液体として1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド([C4mim][Tf2N])を用いて,発光性環状配位子による鉛(II)の抽出,および,種々のβ-ジケトンと疎水性中性配位子によるランタノイド(III)の抽出分離について研究した。
1. 鉛(II)の抽出試薬として,新規発光性環状配位子を3ステップで合成した。この発光性環状配位子による鉛(II)の抽出において,抽出溶媒として[C4mim][Tf2N]を用いると,1,2-ジクロロエタンを用いた場合と比較して,配位子の抽出能が向上することを明らかにした。さらに,発光性環状配位子の部分骨格に相当する抽出試薬を混合して使用した場合よりも鉛(II)の抽出性が向上し,新規配位子の優位性を見出すことができた。
2. 抽出試薬として種々のβ-ジケトンとトリオクチルホスフィンオキシドを用いたランタノイド(III)の抽出分離について検討した。[C4mim][Tf2N]を用いると,従来の有機溶媒系とは異なり,重希土に対して選択的な協同効果が発現し,抽出性だけでなく選択性も高くなることを明らかにした。種々のβ-ジケトンを用いた比較検討から,β-ジケトンの酸解離定数が抽出性と選択性を支配する重要な因子であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に実施した研究内容は,おおむね交付申請書に記載した計画に沿ったものであり,当初期待した通りの結果が得られていると評価できる。新規な抽出試薬として発光性環状配位子の合成に成功し,鉛(II)の抽出挙動を検討できたことに加えて,イオン液体の特徴を活かしたランタノイド(III)の抽出分離においても一定の研究成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果をもとにして,今後は,発光性環状配位子によりイオン液体に抽出された有害金属錯体とイオン液体中における配位子の紫外・可視吸収スペクトルおよび励起・蛍光スペクトルを測定し,その吸収極大波長,励起極大波長,蛍光極大波長,蛍光強度などの分光特性を解析する。また,イオン液体の性能について評価するために,有機溶媒に抽出された有害金属錯体の分光特性と比較する。 有害金属イオンの発光センシングへの応用にあたって,環境中に多く含まれる金属イオンが干渉する可能性があるため,イオン液体中におけるさまざまな金属錯体の分光特性を解析し,分光干渉について評価する。最終的には,発光性環状配位子による有害金属イオンの抽出分離挙動および金属錯体の発光挙動に対するイオン液体の特性を総合的に評価し,発光センシングを目指したさらなる研究につなげる。
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Causes of Carryover |
発光性環状配位子の合成や溶媒抽出実験で使用する試薬等の消耗品が,予定よりも安価に入手できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
配位子の追加合成や溶媒抽出実験,分光測定で必要な試薬等の消耗品の購入のほか,測定システムの拡張に使用し,研究効率を高める。
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