2014 Fiscal Year Research-status Report
DNA修復酵素による傷害部位の効率的な認識機構の解明
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26810084
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
矢澤 健二郎 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 特別研究員 (70726596)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 全反射蛍光顕微鏡 / DNA修復酵素 / 水晶発振子マイクロバランス / 蛍光色素 / ハイブリダイゼーション / 酸化ストレス / 一分子観察 / 電子伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNAは酸化ストレスなどによって損傷が引き起こされ、通常はDNA修復酵素による速やかな修復が行われるが、まれに修復が起こらない場合は疾病の原因となる。そのためDNA 修復酵素は多くの種で保存され生命維持に必須であるが、細胞内での存在数が非常に少ないことが注目されている。細胞内のゲノム遺伝子に存在する膨大な数の塩基対の中で傷害部位のみを認識するためには高効率な認識機構が存在すると予測され、その認識機構にはDNA鎖の塩基のパイ電子系の電荷移動現象とDNA修復酵素に存在する[Fe-S]クラスターが関与していると考えられる。DNA修復酵素の傷害部位認識モデルが提案されているが、証明されておらず、DNA修復酵素による傷害部位の認識過程をリアルタイムで観察することが重要である。そのため本研究では基板表面近傍の蛍光分子の挙動を一分子観察できる全反射蛍光顕微鏡を利用して、DNA鎖とDNA修復酵素を蛍光分子で標識し、DNA修復酵素が傷害部位を認識し、DNA鎖上を移動する過程をリアルタイムで観察することを目的とした。これまでのところ、モデル反応として、全反射蛍光顕微鏡を用いてDNAのハイブリダイゼーション過程の1分子観察系を構築した。DNAをビオチン化修飾し、基板上に固定化し、蛍光色素Cy3修飾したDNAを添加することで、DNAのハイブリダーゼーションの滞在時間を評価した。長さと配列の異なるDNAを実験対象として用いることで、長さと配列に依存したDNAハイブリダーゼーションを解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全反射蛍光顕微鏡を用いた観察では、蛍光色素の蛍光を観察する。その際、実験に使用する蛍光色素の退色や消光の影響をはじめに評価しておく必要があり、その作業に多くの場合、時間を要する。これまでに実験に使用する蛍光色素の消光と退色の影響の評価が終了し、さらにモデル実験として、DNAのハイブリダイゼーションの一分子観察が可能であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸菌由来のDNA修復酵素について、発現および精製する。5’末端ビオチン化プライマーを利用してプラスミドDNAを鋳型としてポリメラーゼによってDNAを合成する。オーバーハング領域にミスマッチを含ませ、中央部にミスマッチを持つDNA鎖を作製する。水晶発振子質量センサを用いて、DNA修復酵素が酸化型でミスマッチを有するDNA鎖に結合活性を有するか確認する。水晶発振子の金電極上にアビジンを介して両末端にビオチンを有するDNA鎖を固定化し、DNA修復酵素を添加する。DNA修復酵素の酸化還元状態により結合の有無が変化すると予想される。得られた反応チャートからDNA修復酵素とDNA鎖との結合と解離の速度定数を求める。DNA修復酵素を蛍光色素で修飾する。全反射蛍光顕微鏡のガラス基板上にアビジンを介して中央部にミスマッチを有する蛍光標識したビオチン化DNAを固定化する。全反射蛍光顕微鏡でDNA鎖の蛍光を確認しながら、DNA修復酵素を基板に添加し、DNA傷害部位の認識過程をリアルタイム観察する。DNA鎖の両末端のビオチンで基板に固定化されない場合は、塩濃度を小さくしDNA鎖のパッキングを軽減する、または、基板上にフローセルを取り付け溶液の流れを利用してDNA鎖を伸びた状態で固定化する。DNA鎖上での移動速度を専用ソフトを用いて解析する。
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Causes of Carryover |
購入した2種類の実験装置(ポリメラーゼ連鎖反応装置と吸光度計装置)の合計金額が既受領額累計より小さかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
DNA鎖に変異を加えるための酵素を購入するために使用予定である。
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Research Products
(1 results)