2014 Fiscal Year Research-status Report
in-vivo微生物電気化学を使った好アルカリ細菌のプロトン集積機構の研究
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26810085
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 章玄 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70710325)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プロトン局在性 / 細胞外電子移動 / 極限環境微生物 / 電気化学 / 細胞外シトクロム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「細胞外pHに逆相関して細胞膜上により多くのプロトンを引きつけ・集積化する」好アルカリ菌の機構の解明を目的としており、本年度は我々が発見した高アルカリ条件下で細胞外の電極表面に電子を受け渡す好アルカリ電流生成菌の単離を行った。現在複数のシングルコロニー形成が確認できており、順調にいけば、これらの中から細胞外電子移動課程を有する初の好アルカリ菌が単離されるはずである。単離されれば、当初の目的であるATP合成と生体電子流をin-vivo追跡する実験を行う。具体的には、ゲノム塩基配列の決定、解析を行い、細胞膜にける電子伝達タンパク質の空間分布を予想する。そして、in-vivo微生物電気化学を用いて、呼吸鎖電子移動の速度論や電子伝達タンパク質の酸化還元電位のpH依存性を明らかにする。 この好アルカリ微生物の単離実験と並行して、中性条件で電極表面に電子を受け渡すモデル微生物である鉄還元細菌Shewanellaにおけるプロトン局在性に関しての検討を比較のために行った。Shewanellaはフラビン分子を生合成、分泌するがペリプラズムのpHによって膜透過性が大きく変化する。この性質を利用してペリプラズムpHを追跡したところ、好気条件ではpHの減少が進行するのに対して、電極に電子移動を行う場合にはpHは中性付近に止まった。これは、プロトンがペリプラズムに全く蓄積していないことを示しており、電子が外膜を通過する際に電荷中性を保つことが重要な電子移動の速度因子であることを示唆している。この発見は、本研究の目的において重要あるだけではなく、近年盛んに研究がなされている細胞外電子移動の分野においても全く新しい知見であり大きなインパクトを与えると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
塩基性環境からの細胞外電子移動を行う微生物の単離が難航し、当初の予定よりも時間が掛かったがほぼ成功裏に検討が進んでいる。現在までに単離できているいくつかの菌が塩基条件下において細胞外の電極へと電子移動を行うことが確認出来れば、次のステップである遺伝子シークエンス・タンパク質解析やin-vivo電気化学検討に進むことができる。この成果に加え、比較対象として行った中性条件で生育する細胞外電子移動のモデル菌であるShewanellaにおいてプロトンのペリプラズム局在性に関して重要な成果が得られた。細胞外に電子移動を行う際にはプロトンが細胞外へと同時に捨てられているという観測結果が得られた。この驚くべき結果は、本研究の目的上重要な知見であるだけでなく微生物電子移動の分野においても極めて新規性の高い重要な成果であり、直ちに論文発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
出来るだけ早く塩基性条件で細胞外電子移動を行う菌体を単離し、遺伝子配列や外膜タンパク質の決定、細胞外電子移動を行う際のプロトン局在性についての電気化学的検討を行う。さらに、比較のために行った中性条件での発見も重要であるため、プロトンがペリプラズムに局在しない現象を他の中性細菌においても検証する。
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