2014 Fiscal Year Research-status Report
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26810088
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大石 俊輔 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任助教 (80707795)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | タンパク質 / 有機合成 / ライゲーション / 生体関連物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
システインリッチタンパク質(CRP)は、ウィルスから真核生物まで多くの生物が持つ、システイン残基を多く含む分泌性の低分子(~20kDa)タンパク質の総称であり、抗菌作用、神経毒性、脂質輸送、植物ホルモンなど様々な機能を持つタンパク質が存在する。アミノ酸配列の約10%がシステイン残基であるという興味深い特徴を持つが、この構造的特徴のためCRPの構造や機能の解明は容易ではない。本研究ではシステインリッチタンパク質に分類される、植物の生殖に重要な花粉管誘引タンパク質の化学合成を行った。花粉管誘引タンパク質は植物の種類ごとにそのアミノ酸配列が部分的に異なるため、交配の種特異性を司る分子の一つであると予想される。 合成はC末端にα-ケト酸を持つペプチド断片とN末端にヒドロキシルアミンを持つもう一つのペプチド断片をケト酸-ヒドロキシアミン(KAHA)ライゲーションによって連結することで達成した。ライゲーション反応は水系溶媒中、無保護のペプチドを用いて温和な条件下で問題なく進行した。またそれぞれのペプチド断片はFmoc法を用いた固相合成によって合成された。 さらに活性試験の結果から、得られた合成タンパク質が花粉管誘引活性を有することも確認した。これによりライゲーション部位に構築されるホモセリン残基がタンパク質の性質に大きな影響を与えないことも示された。この花粉管誘引タンパク質の構造と花粉管誘引における種の特異性の関係を解明するため、現在複数の誘導体の合成とその活性評価をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
合成ターゲットはシステインを多く含むシステインリッチタンパク質であり、合成および取り扱いが困難であることが予想していた。また無保護のシステインを含むタンパク質へのKAHAライゲーションの適用は初めての試みであった。初年度の研究により、ペプチド断片の精製法の最適化およびKAHAライゲーションへの添加物の最適化によってシステインリッチタンパク質に応用可能な合成手法を確立することができた。これにより花粉管誘引タンパク質を数ミリグラムから数十ミリグラム単位で合成することが可能となった。これによりこのタンパク質の立体構造解明のための各種構造解析に十分な量、十分な純度のサンプルの供給が可能となったといえる。今回開発した手法は他のシステインリッチタンパク質にもそのまま適用することが可能であると予想している。 初年度に開発した手法を用いて、現在、誘導体合成および化学修飾されたタンパク質の合成を行っており、順次生物活性試験を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り誘導体や化学修飾されたタンパク質の合成に取り組む。これまでに得られた結果が国内の生命科学者の興味を引くこととなり、新たな共同研究の申し出も受けた。そのため当初予定していなかった合成ターゲットについても目的を広げ、幅広いタンパク質を対象として研究を進めていく予定である。
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Research Products
(1 results)