2014 Fiscal Year Research-status Report
生体内酸化現象解析を指向した活性酸素検出ジヒドロピリミジン蛍光プローブの開発
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26810095
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
西村 良夫 安田女子大学, 薬学部, 助教 (60431516)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ジヒドロピリミジン / 蛍光プローブ / 活性酸素 / 酸化 / ピリミジン / ヘテロ環 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、活性酸素によるジヒドロピリミジン誘導体の酸化反応と、これにより生成するピリミジン誘導体の蛍光検出という方法論を利用して新しい活性酸素検出蛍光プローブを開発するものである。平成 26 年度は新しいジヒドロピリミジン誘導体の合成法の開発を中心に研究を行った。 今回、(1)アルケニルアジドとトリフェニルホスフィンの Staudinger 反応、(2)生成するイミノホスホランとイソシアナートの Aza-Wittig 反応、(3)続くカルボジイミドの閉環反応を連続して行い、ジヒドロピリミジン骨格を構築する新しい手法を開発した。これにより、4,6-無置換 2-アミノジヒドロピリミジン-5-エステル誘導体を効率よく合成できた。この合成で得られた誘導体は 5-エチルエステル体のみであったが、5-N-メトキシ-N-メチルアミド基を有するアルケニルアジドを別途調製して連続反応に用いたところ、所望のジヒドロピリミジン-5-アミド誘導体を合成できた。このジヒドロピリミジンは求核剤との置換反応を行うことができるので、収束的に 4,6-無置換 5-アシル-2-アミノジヒドロピリミジン誘導体を合成することが可能になった。また、5-N-メトキシ-N-メチルアミド基を有するアルケンとジアザジエンの環化反応を利用して、5-アシル-2-アリールジヒドロピリミジン誘導体の収束合成を達成することもできた。これらの誘導体の中で、長い芳香族共役系を有するジヒドロピリミジン誘導体には強い蛍光性の発現が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成 26 年度はジヒドロピリミジン誘導体の新しい合成法開発を中心に研究を行い、4,6-無置換 2-アミノジヒドロピリミジン-5-エステル誘導体および 5-アシル体、および 5-アシル-2-アリールジヒドロピリミジン誘導体の収束的合成を達成できた。現在、新しいフッ素化およびトリフルオロメチル化ジヒドロピリミジンや、双環性ジヒドロピリミジンの合成に取り組んでおり、合成手法の拡大と幅広い誘導体の確保はおおむね順調に進んでいる。特にフッ素化されたジヒドロピリミジンは従来合成例がなく、これにより電子環境の微細に調節が行えると考えている。酸化反応により順次対応するピリミジン化合物に変換し、蛍光スペクトル挙動を調べることは今後行うが、3-クロロ過安息香酸を用いてピリミジン誘導体に速やかに変換できることは確かめているので、変換反応はスムーズに行える。以上より、合成化学的側面に主眼を置いた初年度の研究は一定の成果が挙がっており、蛍光プローブとして検討する分子の選択肢を広げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成 27 年度は、DP 誘導体と対応するピリミジン化合物の蛍光スペクトル挙動を調べる。これまでの解析から、長い共役系と互変異性が重要であると考えているので、この点に注目し、重視する。各種活性酸素種(ROS)との反応性・選択性について調べ、置換基による電子的・立体的効果を詳細に検討して ROS と各種誘導体の組み合わせを系統的に調べて、反応性をコントロールしたい。一般に、ROS の中ではヒドロキシルラジカルが最も有害だが、これにとらわれず従来のプローブとの機能差別化に重点を置く。その後、細胞内での DP 誘導体の蛍光プローブとしての機能評価を行う。1) 細胞膜透過性、2) 細胞内小器官局在性、3) 化学種選択性・検出感度、4) 安定性などを中心に、既存の蛍光プローブと比較しながら評価する。利便性の面からヒト子宮頸がん (Hela) 細胞株およびヒト前骨髄性白血病細胞株 (HL60) を用いる。蛍光プローブ候補化合物の細胞内導入後に各種 ROS を濃度調製したものを曝露し、細胞内での化学種選択性と検出感度を評価する。曝露は細胞外由来の ROS だが、これとは別に細胞内由来で発生させた ROS の検出について検討する。比較対象として、フルオレセイン型の DCFH-CAやミトコンドリア局在性カチオン型の MitoPY1, MitoDPPP などを用いる。蛍光性 DP 誘導体を利用することによって、細胞膜透過性や細胞内動態を可視化できるため多面的に評価できるとともに、安定性や ROS の検出過程をリアルタイムに追跡できる可能性があるので、検討する。
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Research Products
(6 results)