2014 Fiscal Year Research-status Report
二酸化チタンの階層的構造構築による色素増感太陽電池の高機能化
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26810101
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
冨田 恒之 東海大学, 理学部, 講師 (00419235)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 色素増感太陽電池 / 二酸化チタン / アナターゼ / ルチル / ブルカイト / 粒子形態制御 / 水溶性チタン錯体 / 水熱法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、色素増感太陽電池の高効率化を目的として、色素増感太陽電池の光活性電極として用いられる二酸化チタンをミクロ(原子配列)・メソ(粒子界面)・マクロ(膜の成層構造)の階層的構造構築を行い、太陽エネルギーの変換効率向上を目的とする。ミクロ構造制御では、最適な二酸化チタンの原子配列、すなわち結晶多形としてアナターゼ、ルチル、ブルカイト、ブロンズの4種類を合成し調査する。メソ構造制御では、二酸化チタン粒子同士の接触界面をナノメートルスケールで制御し、最適なネッキングを構築することで二酸化チタンの伝導帯中の電子移動を最適化する。マクロ構造制御では、針状や棒状など一次元的に成長させた二酸化チタン粒子の利用や、二酸化チタンによる光の散乱を抑制するためのナノ粒子光吸収層の配置、異なるサイズの粒子の共存による充填率向上と吸着色素量増大など、ナノメートルからマイクロメートルスケールの構造を制御する。最終目標として、色素増感太陽電池におけるもっとも理想的な二酸化チタンの階層的構造構築を実現することを目指す。 2014年度にはミクロ構造として結晶構造の違いの影響を詳細に調べ、アナターゼ型、ルチル型、ブルカイト型、ブロンズ型の4種類の試料を近い比表面積で合成し、そのエネルギー変換効率を比較・検討した。またメソ構造制御に該当する、粒子形態制御の一つとして、長さの異なる針状アナターゼ型二酸化チタンを合成し、それらを用いて電極としての機能を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度はミクロ構造と針状粒子の影響を調査した。ミクロ構造の影響は、アナターゼ、ルチル、ブルカイト、ブロンズ型の4種類の二酸化チタンを合成し、それらを用いて多孔質電極を作製し、色素増感太陽電池として評価した。エネルギー変換効率は従来の報告と同様にアナターゼ型が最も高かった。ルチルについてはアナターゼと同程度の低い抵抗で、電流値が小さいことが変換効率が低い要因であることが明らかになった。ブルカイトはアナターゼやルチルより高い開放電圧を示したが、一方で直列抵抗が高いことが分かり、高効率化には多孔質電極内の抵抗を下げる必要があることが示唆された。ブロンズは他の3多形に比べて抵抗が高く電流値も低く、電極材料として不向きであることが分かった。 針状粒子の影響はアナターゼ型で調査し、酒石酸チタン錯体と各種アミンを用いて合成した。様々なアミンを検討した結果、隣同士の炭素にアミノ基を持つジアミンやトリアミンのみにおいて針状粒子の生成が確認され、炭素鎖が長くなると形成しなくなることがわかった。このことから、あるアミノ基同士の間隔がアナターゼ粒子表面の特定のチタンに配位し、針状粒子を作ることが強く示唆された。合成時の昇温条件によって200~350nmの長さの異なるニードル形粒子が得られ、これらを用いて色素増感太陽電池の多孔質電極を作製し、エネルギー変換効率を調べた。200nmの粒子を用いたとき、ほぼ同じ比表面積のアナターゼ粒子に比べてやや高い変換効率を示した。当初の目的どおり直列抵抗が低い値を示し、これがエネルギー変換効率の向上につながったと考えられる。一方、350nmの粒子を用いたときにはエネルギー変換効率が低下し、抵抗もやや高い値を示した。これは成膜方法がドクターブレード法であるため、粒子の長軸方向が面内に並んでしまうことで、膜の厚さ方向の電子伝達効率が下がったためと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
アナターゼ型に比べて、ルチル型では電流値が低いことが、ブルカイト型では開放電圧が高いことが示唆された。またルチル型は透明電極との密着性が他に比べて高いことが分かった。そこでルチル型の薄い緻密な層を作製し、バッファー層としての利用を検討する。ブルカイト型では高い開放電圧を生かすため、低抵抗化を狙いニオブ等の異種元素ドーピングを行う。 ニードル状アナターゼ型二酸化チタンはその合成条件を十分に確立できたため、今後はその利用を拡大させる。長い粒子が成膜によって膜の厚さ方向に並んでしまう現象が見られたため、特定の配列をさせないような別の成膜方法として、インクジェット法やスクリーンプリント法を実施する。また直列抵抗が低くなったことより抵抗の低減には効果があったと考えられ、よって他の粒子との複合化を行う。特に色素吸着量を大きくしやすい微粒子のアナターゼとの複合化や、高い電圧を示したブルカイト型粒子との複合化を行い、エネルギー変換効率の向上を狙う。 また、透明電極と多孔質層との間の接触が不十分なことが多く、そこで水溶性チタン錯体を用いたバッファー層の作製を行う。従来は四塩化チタンが用いられていたが、溶液が強酸性である必要があり、アルミニウム等の配線を侵すため好ましくないとされていた。水溶性チタン錯体ではほぼ中性の水溶液で成膜が可能であり、工業化・量産化に向けてよりソフトな条件での成膜を示すことで大量生産におけるプロセスの効率化が期待できる。
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Causes of Carryover |
消耗品の購入の際に当初の金額よりも安くなったため、差額の690円が残額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用計画に変更はない。
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