2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26810104
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
三石 雄悟 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 主任研究員 (70645879)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光触媒 / 太陽光 / エネルギー変換 / 水素 / 水の酸化反応 / 結晶面 / 酸化タングステン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光触媒の表面構造制御の重要性を明確化するために、露出結晶面の異なる酸化タングステン(WO3)粉末を調製し、Fe3+を還元しながら水を酸化するエネルギー蓄積型(ΔG>0)の光触媒反応を評価する。特に、望まれない副反応である、生成したFe2+の再酸化過程に由来する性能低下を露出結晶面の制御により抑制できるか評価する。さらに、可視光の大部分を利用可能な光触媒材料の開発および性能向上を目的としている。 本年度は、酸化と還元の反応場を空間的に分離できるWO3粒子を調製し、市販品の無定形粒子との逆反応速度を比較した。その結果、同じ結晶構造を有するWO3粒子であっても、Fe2+蓄積に伴う性能低下率に、劇的な差があることを明らかにした。今回調製した反応場を分離できるWO3粒子は、市販品よりも大幅に逆反応が促進されてしまった。このことから、現状露出していない結晶面を選択的に露出させることで、改善できる可能性がある。 可視光の大部分を利用可能な新規光触媒の開発にも成功した。540nmまでの可視光を利用できるPbCrO4が、水の酸化反応を進行できる新材料であることを見出した。バンド構造の詳細な解析を行った結果、伝導帯位置が+0eV vs. RHEと従来の酸化物材料と比べ高い位置に形成されており、幅広い可視光を利用できる材料としては魅力的なバンド構造を有していることを明らかにした。 安価で安定な材料であり、600nmまでの光を吸収できるFe2O3光触媒に少量のCoOxを修飾することで、その性能を2倍に向上できることを見出した。興味深いことに、CoOxはレドックスの再酸化を抑制する機能があることがわかった。Fe2O3を利用したZスキーム型光触媒で初めて水を完全分解することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粒子の形状を変化させ、露出結晶面を制御することで、Fe2+蓄積に伴う性能低下率に、劇的な差があることを明らかにしたことから、表面制御の重要性を明確化することができた。さらにCoOx助触媒にはレドックスの再酸化を抑制する機能があることがわかった。540nmまでの可視光を利用できるPbCrO4が、可逆レドックスを利用した水の酸化反応を進行できる新材料であることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
露出結晶面を制御することで、逆反応の速度に大きな差が生じることが明らかになった。このことより、現状露出していない結晶面の選択的露出を実現する調製手法を用いてWO3を調製し、性能評価を行う。具体的には、鋳型を用いた水熱合成手法を利用する予定である。理想的な結晶面の選択的露出に成功した粒子は、透過型電子顕微鏡を用いた手法により、結晶面の同定を行う。可視光の大部分を利用可能な新規光触媒の開発も同時に行う。具体的にはCrを含む様々な化合物を調製し、光触媒性能を評価する。最終的に、可視光の大部分を利用可能な光触媒材料の性能向上を実現するための指針を提案する。
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Causes of Carryover |
理想的な結晶面を露出した粒子のTEM分析を予定していたが、その依頼分析を次年度へ持ち越したこと、および、キセノンランプ等の高価な消耗品の購入を次年度へ持ち越したため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
キセノンランプ等の消耗品購入および透過型電子顕微鏡を用いた結晶面分析の依頼に使用する。
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Research Products
(5 results)