2014 Fiscal Year Research-status Report
アミロースハイブリッドライブラリーの構築による次世代人工シャペロンの創製
Project/Area Number |
26810113
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西村 智貴 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (60648070)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シャペロン / 両親媒性ポリマー / 糖鎖 / 酵素重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アミロースハイブリッドポリマーからなる化合物ライブラリーの構築とそれら分子の特性とタンパク質の凝集抑制機能(シャペロン機能)との相関関係の解析を行なう。これにより 新規人工分子シャペロンを開発するための研究基盤を確立するものである。 昨年度は、親水性及び疎水性を調整した化合物ライブラリーを構築し、どのような物性の分子が分子シャペロン機能を有するのか評価を行った。 当初の予定通り、1、4、8本鎖PEGを基本骨格として、そのポリマー末端に種々の疎水基を、また親水性基としてマルトペンタオースを導入したポリマーを合成した。加えて、ポリマーの親水性を向上させるためにホスホリラーゼによる酵素重合により糖鎖重合度を増加させてものも合わせて合成し、アミロースハイブリッドライブラリーの構築を行った。 次いで、モデルタンパク質として炭酸脱水素酵素(CAB)を用いて、ライブラリー中のポリマーのタンパク質凝集抑制能の評価を行った。加熱によるCABの凝集抑制能を評価したところ、CABのみでは溶液の濁度が増加したのに対し、すべてのポリマーとの混合溶液では、溶液の濁度増加は見られなかった。このことから、合成したポリマーは加熱により変性したタンパク質の不可逆的な凝集を防いでいることがわかった。 さらに、それぞれのポリマーの加熱変性CABへのシャペロン活性を、ニトロフェニルアセテートの加水分解反応速度を測定し評価を行った。その結果、8 > 4 > 1本鎖の順にシャペロン活性が高くなること、また糖鎖重合度が5のものが15のものよりも高い活性を示す事を見いだした。最も活性の高いポリマーは、加熱変性CABの活性が約80%まで回復した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度終了までに予定していたクリック反応を用いた多分岐PEGを主骨格とした両親媒性アミロース鎖ライブラリーの構築は達成した。また、ライブラリーの中からある程度高いシャペロン活性を示すものを見いだす事に成功しており、ほぼ順調に進展していると考える。また、本研究の目的とは異なるが、マルトペンタオースとある種の疎水性ポリマーからなる両親媒性のブロックポリマーが化学変性タンパク質に対して高いシャペロン活性を持つ事も発見した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究より親水性及び疎水性を調整したアミロースハイブリッドライブラリーの構築および機能評価まで達成した。したがって当初の予定通り、人工分子シャペロンに求められる分子の特性を明らかにするために、物理化学的性質(ポリマー会合体の疎水領域の極性、会合数、粒子径など)と機能の相関の解明を行う。
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Causes of Carryover |
該当年度は、化合物の合成によるライブリーの構築がメインであったために、高価な試薬や消耗品(FFFのメンブレンやTEMグリッド)が不要であった為に比較的研究費の使用が押さえられた。また、研究が初期の段階であり校正やオープンアクセスなど論文投稿における費用がかからなかったことが要因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では、構築したライブラリーの機能評価のためにFFF-MALSやNMRなどの物理化学的評価およびタンパク質活性に関する評価を行なう。そのため、有機合成用の試薬に比べやや高価な試薬や消耗品が必要となる。これらの購入を昨年度からの繰り越し分をうまく使い研究を進めてゆく。また、本年度は最終年度でもあることから、論文の投稿や積極的な学会発表を行い外部に研究を報告する予定である。
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