2014 Fiscal Year Research-status Report
無機ホスト-ゲスト系化合物のナノサイズ効果を利用した機能材料の創製
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26810118
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
黒田 義之 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (50638640)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ホスト-ゲスト化合物 / 層状物質 / 多孔体 / イオン交換体 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、3年間で新規ホスト-ゲスト化合物の合成、評価、応用を検討する計画である。これらの実験を通じ、ホスト-ゲスト化合物のナノ構造制御に由来するゲスト取り込み能の変化機構を明らかにし、それを利用した材料設計を目指す。本年度は新規なホスト-ゲスト化合物の合成、それらのナノ構造制御を目的として実験を行った。 研究代表者らはこれまでにtris(hydroxymethyl)aminomethane (TRIS)が層状複水酸化物(LDH)と共有結合を形成することを利用し、サイズ制御されたLDHナノ粒子の調製に成功している。本年度、これらのLDHナノ粒子を界面活性剤と共に集合させ、熱分解により多孔体に変換できることを明らかにした。本手法では、LDHナノ粒子の粒子径を精密に制御できることが特徴である。LDHナノ粒子の粒子径や界面活性剤の量を変化させることで、生成物の細孔径を約3 nm~約33 nmの広い範囲で制御することができた。 一方、TRISとマグネシウム塩を用いることで、層状水酸化マグネシウムの層間がTRISにより修飾された新規ハイブリッド化合物が得られることを新たに見出した。XRD、元素分析等から、この化合物は水酸化マグネシウムと同様の層構造を有しているが、その積層は乱れていることが推定された。また、IR、固体NMR等の分析により、層表面にはTRISが共有結合により修飾されていることが示された。TRISは末端にアミノ基を有しており、これが新たな反応サイトとなる。このハイブリッド化合物は、層状水酸化マグネシウムに比して極めて高いゲスト取り込み能を有している。 本年度はホスト-ゲスト化合物のナノ構造制御手法を開発し、新規なホスト-ゲスト化合物の合成にも成功した。今後はこれらの化合物のゲスト取り込み能を評価し、メカニズムを検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度目標としていた新規ホスト-ゲスト化合物の合成、ホスト-ゲスト化合物のナノ構造制御については一定の成果を挙げ、目標を順調に達成したと言える。特に、従来には例の無い、TRISと水酸化マグネシウムからなる新規ハイブリッド化合物は、予備的実験においても、高いゲスト取り込み能を有することが示されており、今後そのゲスト取り込み能を詳細に検討することは意義深いと言える。この様な化合物が得られたことは、ホスト-ゲスト化合物の化学のみならず、広く無機材料化学に波及効果の期待できる成果であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、新規物質の合成に成功しているため、次年度は当初の予定通り、得られた化合物のゲスト取り込み能をはじめとする物性評価に着手する。具体的には、層状複水酸化物ナノ粒子を原料として得られた多孔体を用い、アニオン交換特性や触媒特性を評価する。また、TRISと水酸化マグネシウムからなる新規ハイブリッド化合物を用い、そのインターカレーション反応を詳細に検討することで、ゲスト取り込み能が水酸化マグネシウムとどのように異なるかを明らかにする。これらの物性向上の原理を明らかとするために、いずれの実験も種々の分析法を組み合わせ、定量的に推進する。 一方、本年度、新規ハイブリッド化合物の合成法について顕著な成果が得られたことを受け、次年度も本手法をさらに拡張すべく、合成方法の検討を引き続き行う。現状では、TRISと水酸化マグネシウムの場合にのみ、表記のハイブリッド化合物が得られているが、有機部、無機部の一般性について検討する。 上記を鑑み、次年度は予定通り新規化合物の物性評価のために必要な機器(電気化学測定機器)や消耗品を購入する。また、本年度得られた成果を発表するための旅費を申請する。上述の様に、合成方法の検討も行いたいと考えているが、これを効率よく進めるため、反応装置の購入も予定している。
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Causes of Carryover |
本年度前半(4月~8月頃)までに、目標としていた新規ホスト-ゲスト化合物の合成について、重要な成果を挙げることが出来た。そのため、当初の想定ほどの消耗品費を使用すること無く、予定通りの成果を挙げることが出来た。その分の経費を学会発表旅費にも用いたが、全体としては約10万円の余剰額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、基本的には当初の計画通りに経費を使用していく。 本年度は、当初計画には無かったが、本年度得られた成果を元に新規ハイブリッド化合物の合成条件や適用範囲の拡大を目指した実験を行いたいと考えている。このために必要となる反応装置を、本年度の余剰金により購入したいと考えている。
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Research Products
(5 results)