2016 Fiscal Year Research-status Report
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26810122
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
嵯峨根 史洋 静岡大学, 工学部, 講師 (70443538)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アニオン / 黒鉛電極 |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度はアニオン挿入反応に伴う活性化障壁の要因を探るべく、水溶液中におけるアニオン挿入脱離反応に着目し、その速度論を非水溶液と比較した。 過塩素酸水溶液中で黒鉛電極の電気化学挙動を調べたところ、可逆的な過塩素酸アニオンの挿入脱離反応に起因する電流が認められた。また、交流インピーダンス法により、過塩素酸アニオンの挿入脱離に伴う電荷移動抵抗を見積もることに成功した。この温度依存性から界面イオン移動の活性化エネルギーとして19 kJ mol-1を得た。この値は炭酸プロピレン中において過塩素酸アニオンが挿入脱離する際の活性化エネルギーと比べて若干小さな値である。溶液中でイオンは周囲の溶媒との相互作用を持つ。一般的に非水溶媒はカチオンとの相互作用は強い一方、アニオンとの相互作用は小さい。本研究においてもラマン分光測定によりアニオン-溶媒間の相互作用が小さいことを確認している。これに対しH2Oはカチオン・アニオン共に強く相互作用できる。従ってこれまでリチウムイオンを始めとするカチオンの相間移動で報告されている通り、脱溶媒和過程が活性化障壁の要因であるとすれば、水溶液中での活性化エネルギーは非水系と比べ大きくなるはずである。従って水溶液中でのアニオン移動は、脱溶媒和を活性化障壁としない反応であることが示唆された。 これを詳しく検証するために、水溶液中で過塩素酸アニオンを挿入させた後の黒鉛電極をエックス線回折測定により調べた。その結果、黒鉛の相間距離は非水溶液で得られた黒鉛電極よりも大きな値を示した。これは水溶液中で過塩素酸アニオンは単独で黒鉛電極に入らず、相互作用しているH2O分子を伴った共挿入反応となることを示唆している。 以上の結果より、アニオン挿入反応のにおいては、カチオンとは異なる理由で溶媒の選択が電気化学挙動に大きな影響をもたらすことを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画に掲げた内容は(1)界面イオン移動の速度論的考察、(2)電極内拡散挙動の把握、(3)外部環境の変化によるアニオン移動への影響である。 これまでに(1)に関してはアニオンのサイズ、溶媒の影響に着目して当初の計画を上回る成果を得ている。(2)に関しては28年度に着手し、これまで合剤電極を用いた測定法に取り組んできた。集電体の種類や合剤電極の組成・塗布方法など、測定のノウハウを手に入れた段階であるが、電気化学測定装置の故障により研究の遅れが生じている。(3)に関しても同様であり、研究期間を延長することで残課題の解決に取り組む。 なお、故障中の装置は現在修理中であり、29年度中に計画したすべての課題の遂行は可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで溶液中のアニオン種が黒鉛に挿入する仮定を中心に調べてきたが、29年度は黒鉛電極内の拡散挙動及び、黒鉛電極から脱離する際の電気化学挙動に着目した研究を行う。カチオン種の挿入脱離過程においてはいくつか反応モデルが提唱されているのに対し、アニオン種の反応機構について報告した例は少ない。今後は種々の充放電状態における黒鉛電極をエックス線回折測定およびラマン分光法を用いて解析することで、反応過程に関する考察を行う。 また、黒鉛電極に印加される圧力によってアニオン挿入反応の速度論が受ける影響について明らかにすることで、アニオン挿入脱離反応を利用した新規蓄電デバイス開発のための基礎的な知見を得る。
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Causes of Carryover |
測定装置の故障により、計画通りの研究遂行が困難となった。このため研究期間の延長を申請し、計画した研究課題の遂行を次年度に行うこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の遂行に必要となる試薬及び電極材料などの消耗品に使用する。また、論文投稿及び学会での成果発表に使用する。
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