2014 Fiscal Year Research-status Report
Curie温度向上に向けたチタン酸バリウムへのメソ細孔由来歪み導入
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26810126
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
鈴木 孝宗 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (10595888)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | メソ多孔体 / チタン酸バリウム / Curie温度 / 歪み / ゾルゲル法 |
Outline of Annual Research Achievements |
界面活性剤を鋳型にしたゾルゲル法により、多孔性チタン酸バリウム薄膜を作成した。焼成に伴う細孔骨格内での結晶成長により、メソ細孔同士の結合が生じた結果、メソ細孔の規則性は失われてしまったが、メソ細孔構造自体を保持することには成功した。Ramanスペクトル測定から、強誘電相である正方晶が形成されていることを確認した。また、高周波数側へのフォノンピークシフトが見られたことから、メソ細孔により圧縮歪みが導入されたことが推測された。 メソ細孔により誘起された歪みについては、高速Fourier変換法により詳細に調べた結果、メソ細孔骨格内のチタン酸バリウムは[1-10]方向に異方的に歪んでいることが判明した。このような異方的な圧縮歪みは電気双極子モーメントを増加すると考えられるため、強誘電性(圧電性)向上が期待される。実際、多孔性膜においてはCurie温度の顕著な向上が観測され、約470℃に達した。この値は、現在強誘電体として広く使われているチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の値を凌駕している。また、多孔性膜における圧電ヒステリシス曲線の拡大も観測した。これらの結果から、細孔がもたらす異方的な歪みにより、チタン酸バリウムの強誘電性(圧電性)が向上したことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メソ細孔が制御されたチタン酸バリウム薄膜の作製には至っていないが、Curie温度向上自体は達成できた上、高速Fourier変換法による歪み解析の結果、結晶格子の異方的な歪みが観測され、メソ細孔導入による強誘電性(圧電性)向上を論理的に説明することができたため。 また、本研究の先進性が評価され、Chemistry -An European Journal誌の背表紙を飾る栄誉に輝いたため。
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Strategy for Future Research Activity |
はじめに、結晶成長に伴うメソ細孔同士の結合を防ぎ、鋳型である界面活性剤ミセルが作り出すナノ構造を維持する手法を確立する。次いで、界面活性剤を多様化することで、様々な形状・サイズ・配列のメソ孔を持つメソ多孔体チタン酸バリウム薄膜を作製する。系統的研究を通して、Curie温度向上に最適なメソ細孔構造を見いだす。 また、高温下におけるRaman分光測定やTEM観測を行い、メソ細孔由来の歪みは熱的に安定であり、その歪みが結晶相転移温度を上昇させることで、Curie温度向上がもたらされていることを立証する。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していた卓上真空ガス置換炉(KDF-75)を研究協力者が機構内補正予算で購入し、私が昨年度予算を用いて購入する必要がなくなったため。 また、旅費についても機構から与えられた運営交付金でまかなうことができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定していた消耗品購入・旅費の他、外注依頼している高額な高速Fourier変換法による解析費用に昨年度剰余額を使用する。
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