2014 Fiscal Year Research-status Report
拡張π電子系アクセプター骨格を有する新規高性能半導体ポリマーの開発
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26810129
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
森 裕樹 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (20723414)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 半導体ポリマー / 有機薄膜太陽電池 / 有機電界効果トランジスタ / 有機半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
半導体ポリマーを用いた薄膜太陽電池や電界効果トランジスタといった有機電子デバイスは、軽量、低コスト、柔軟で大面積化が可能な次世代のエレクトロニクスとして注目されている。本研究では、より高性能なデバイスを達成するために、新たな電子不足芳香環であるピレノ[4,5-c:9,10-c’]ビスチアジアゾール (PyTz) を合成し、それらを主鎖に導入した新規半導体ポリマーの開発を目的に研究をおこなっている。 平成26年度では、まず本研究の軸となる未知の PyTz 骨格を構築するため、容易に入手可能なピレンを出発原料とし、Ru 触媒を用いた酸化、続くオキシム誘導体への変換と還元、最後に塩化チオニルを用いたチアジアゾール環形成反応により PyTz 骨格の構築をおこなった。しかしながら、剛直で広い π 系をもつため、溶解性が極めて低く、目的の PyTz を得ることができなかった。そこで、先に可溶性置換基を導入する合成経路を発案した。上記と同様、ピレン酸化をおこなった後、カルボニル基をメトキシ基に変換し、臭素化を経て、クロスカップリング反応により、可溶性基であるアルキルチオフェンの導入に成功した。その後、メトキシ基の脱メチル化、酸化、オキシムへの変換と還元の計 4 ステップで PyTz の前駆体を合成した。先ほどと同様に、塩化チオニルを用いたチアジアゾール環形成反応により PyTz 骨格の形成をおこなったところ、アルキルチオフェンを導入した PyTz 誘導体の合成に世界で初めて成功した。 今後は、得られた誘導体を臭素化することでモノマーとし、すでに合成しているビチオフェン誘導体とのクロスカップリング反応を用いた共重合反応により、目的のポリマーを合成し、有機薄膜太陽電池および有機電界効果トランジスタへの応用をおこなう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で最も重要であり、困難であるのは、これまでに報告例のない未知のピレノビスチアジアゾール (PyTz) 骨格を構築する点にある。予定していた合成経路での PyTz 骨格構築はできなかったが、別経路での合成を検討した結果、PyTz の骨格に成功した。今後、組み合わせる予定のドナーユニットや導入する様々な種類の可溶性側鎖はすでに十分な量のサンプルを合成していることや太陽電池やトランジスタ素子の作製・評価の体制は整っていることから、様々な種類の PyTz ポリマーの合成から有機電子デバイスへの応用はスムーズにおこなうことが可能である。そのため、現在までの研究はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
構築に成功した PyTz 誘導体を臭素化することでモノマーとし、すでに合成しているビチオフェンとの共重合により目的のポリマーを開発する。得られたポリマーの物理化学特性および薄膜構造の解析、薄膜太陽電池や電界効果トランジスタへの応用をおこなう。その後、当初の予定通り、増炭することで分岐位置の異なるより長いアルキル鎖を導入したポリマーの合成、ターチオフェンやチエノチオフェンなどの異なる芳香族ユニットと組み合わせたポリマーの合成を順次おこない、可溶性側鎖の分岐位置や長さ、異なるスペーサーによるポリマー主鎖構造の変化や規則性の違いによる特性や構造への影響を調査する。これにより、それぞれ薄膜太陽電池および電界効果トランジスタに適したポリマーを生み出すほか、構造-特性相関を明らかとしていく。 一方、研究を進めるにあたり、可溶性置換基としてアルキルチオフェンを導入後、PyTz 骨格を構築する現在の合成ルートでは、可溶性側鎖を変更する際に、合成効率に乏しい。そのため、より効率的な合成を達成するために、PyTz 骨格を先に合成する経路の開拓も同時におこなう予定である。
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Causes of Carryover |
H26 年度では、PyTz 骨格の構築に時間を要し、当初に予定していたデバイス作製にかかる消耗品の準備費用が予定よりもわずかに少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27 年度は、当初予定していたポリマー合成にかかる有機反応剤、有機薄膜太陽電池および有機電界効果トランジスタ素子の作製に必要な基板に加え、次年度使用額を有機合成に足りない反応剤やデバイス作製にかかる物品の費用を補う予定である。
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Research Products
(1 results)