2015 Fiscal Year Research-status Report
X線回折を用いた3次元溶接残留応力分布の非破壊的な評価
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26820005
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小川 雅 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90635236)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 残留応力 / 逆問題 / 溶接 / 固有ひずみ / X線回折 / 有限要素法 / 3次元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,現場でも利用できるX線回折を用いて,部材全域の溶接残留応力を評価する手法を,実際の溶接平板に対して適用し,3次元溶接残留応力を非破壊的に評価することを目的とし,今年度は以下の研究成果を得た. 1.前年度は,実際のフェライト系鋼材の突合せ溶接平板に対してX線回折による非破壊測定を行い,本手法により推定した残留応力分布とX線回折により直接測定した実測値とを比較したところ,本手法の推定精度は十分であるとは言えなかった.そこで,溶接固有ひずみの厚さ方向と溶接線方向分布を考慮できるようにし,さらに溶接余盛を機械加工した後の加工面の計測情報を取り入れることにより,推定精度を改善することができた. 2.700℃級先進超々臨界圧の火力発電での適用が期待されているインコネル617合金とフェライト鋼との異材溶接継手の製作に着手した.具体的には,数値解析による検討から比較的精度よく推定するための部材寸法を決定し,部材を入手して接合方法の決定を行った.インコネル617合金にフェライト系の溶着金属を用いたバタリング溶接を行い,フェライト鋼との接合の前処理を行った. 3.本手法では,溶接余盛を除去する前後にX線測定を行うが,溶接余盛を除去した後の測定値のみから残留応力を推定することで,完全非破壊な方法となる.本年度にその完全非破壊手法の推定精度についても評価を行った.また,本手法の推定精度を評価するために,部材を切断した際にひずみゲージで測定した解放ひずみの値と,本手法により推定した解放ひずみの値とを比較した. 本年度により,手法の推定精度は高まったが,熱源を振動させて接合した影響により,固有ひずみ分布が比較的複雑になった可能性がある.そこで,次年度は熱源を振動させずに接合した場合の推定精度について検証を行う.そして,その結果を踏まえて異材接合条件を決定する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本手法の推定精度を向上させる方法について,固有ひずみの厚さ方向分布を考慮する方法と溶接線近傍の測定情報を用いる方法の2つの方法を適用し,推定精度の向上を達成することができた. 一方で,溶接余盛を除去した後の測定値のみから残留応力を推定した際の推定精度の検証結果や,切断時の解放ひずみの実測値と本手法による推定値とを比較した結果から,溶接接合時に熱源を振動させた影響が推定精度に悪影響を及ぼす可能性が示唆された.そのため,本年度は異材接合材に対しても本手法を適用する予定であり,異材溶接継手の製作に着手したが,比較的高い推定精度が得られる接合条件や推定方法を十分に検討することが重要であると考え,そのことに注力した. また,ひずみゲージを用いて本手法の推定精度を検証することができたが,ひずみゲージの使用の前準備,計測,測定後のデータ処理に比較的多くの時間と労力を費やした.しかし,今回経験したことで,今後は測定に要する時間を短縮することができると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
接合時に熱源を振動させる必要がなく,また溶接線方向にも比較的一定に精度よく接合できる方法として,摩擦攪拌接合がある.この接合材は新幹線や船舶など,輸送機器を中心に先進的な接合方法として近年注目されており,世界的な市場を有す.そのため,本研究では熱源を振動させない場合の接合方法として,摩擦攪拌接合の溶接平板を対象に本手法を適用し,その推定精度の評価を行う.これによる推定精度の検証結果を踏まえて,インコネル617合金とフェライト鋼との溶接接合条件を決定し,異材溶接継手に対する本手法の適用を行う. また,本手法の推定精度を評価する方法として,引き続きひずみゲージを用いる方法を行うとともに,できれば熱弾塑性有限要素法に基づく数値シミュレーションによる推定残留応力とも比較したいと考えている.
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Causes of Carryover |
本年度は,本手法による残留応力分布の推定精度を評価するために,部材にひずみゲージを張り付け,切断した際の解放ひずみを測定し,本手法により推定される解放ひずみの値との比較を行った.その際,できるだけ多くのひずみゲージを貼り付ける予定であったが,防水ひずみゲージの範囲が大きく,あまり多くのひずみゲージを貼り付けることができなかったため,比較的高価なひずみゲージ用のアンプ兼ロガーを購入する必要がなかった. また,米国あるいは欧州で開催される国際会議での研究成果の発表を想定していたが,日本でも本研究成果を発表するのに相応しい比較的大きな国際会議が開催されたため,海外での発表は行わなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は,まずはアルミニウム合金の摩擦攪拌接合材料を対象として,その製作,測定,推定,推定精度の評価に関わるものに支出する.そして,異材溶接接合平板を製作するとともに,本手法による溶接残留応力分布の評価を行う. また,本研究の成果をより広く公開するとともに,本手法による推定方法をさらに改善し,推定精度を向上させるために,意見交換や情報収集を国内外問わず精力的に行っていく.特に,3,4年に一度開催される本研究分野の最高峰の国際会議にて研究発表を行う予定である.さらに,同じ研究分野の海外の研究者とディスカッションを行う機会が得られる予定であり,情報収集等を通じて本手法の推定精度を向上を図る.
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Research Products
(7 results)