2014 Fiscal Year Research-status Report
局所不安定性解析を用いた欠陥を有する多層カーボンナノチューブの座屈特性評価
Project/Area Number |
26820006
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
西村 正臣 信州大学, 学術研究院工学系, 講師 (40554580)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子動力学法 / カーボンナノチューブ / 格子欠陥 / 局所格子不安定性 / 弾性剛性係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,欠陥構造がカーボンナノチューブ(CNT)の座屈特性に与える影響について検討するために,分子動力学法を用いて欠陥を有する多層CNTの圧縮および曲げ変形シミュレーションを実施する.さらに,原子レベルでの変形抵抗を議論する局所不安定性解析により,欠陥付近で生じる局部座屈について評価することで,欠陥を有する多層CNTの座屈メカニズムを原子レベルから明らかにする. 平成26年度は,軸方向圧縮変形下におけるCNTの座屈特性の評価を中心に研究を進めて,以下の結果を得た. 欠陥を有する多層CNTを軸方向に圧縮すると,欠陥付近からCNTの筒形状が崩れる局部座屈が発生しており,多層構造の内側の層に欠陥を導入した場合でも,同様に欠陥位置からの局部座屈の発生が確認できた.座屈発生時の欠陥周辺においては,欠陥の導入されていない層においても,不均一な応力状態となっており,これにより局部座屈が生じたことが示唆された.原子弾性剛性係数であるBマトリクスの正値性によって,各原子位置における局所不安定性について評価したところ,局部座屈が生じるよりも小さなひずみ時点ですべての原子位置におけるBマトリクスの行列式が負となっており,局所不安定と評価された.そのときの各Bマトリクスを固有値解析したところ,負となる固有値に対応する固有ベクトルはチューブの層間をせん断するような方向へのひずみに対応していることが示された.さらに,Bマトリクスの第2最小固有値について評価したところ,局部座屈が発生する直前から欠陥周辺の原子位置において負となることが明らかになった.これにより,各原子位置における原子弾性剛性係数の第2固有値までを評価することで,CNTの局部座屈について把握できる可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,平成26年度は軸方向の圧縮変形下における多層CNTの座屈特性について,原子弾性剛性係数を用いた局所不安定性に関する知見を得ることができた.また,周期境界条件下における曲げ変形シミュレーションについても実装して,いくつか研究発表も行っており,次年度から新たな検討に取り組める状態である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に実施した軸方向の圧縮シミュレーションに加えて,曲げ変形下で生じる局部座屈についても検討する.当初の計画通り,周期境界条件下におけるCNTの曲げシミュレーションはすでに実装済みであるので,欠陥構造や多層構成を変化させた種々の多層CNTを対象として,曲げ変形シミュレーションを実施するとともに,原子弾性剛性係数による局所不安定性の検討により,局部座屈と欠陥周辺部における力学特性との関係性について明らかにする.
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Causes of Carryover |
当初計画で見込んでいたよりもわずかに安価に研究が進んだため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は,平成27年度請求額と合わせて,消耗品費や論文投稿費として使用する予定である.
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