2015 Fiscal Year Research-status Report
多結晶金属の塑性変形による結晶格子回転機構の解明とメゾスケールモデリング
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26820012
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
只野 裕一 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00346818)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 結晶塑性 / 格子回転 / 多結晶 / FCC |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は,所属機関による長期海外派遣事業により,平成27年4月1日より平成28年3月10日までの約1年間,アメリカ合衆国へ派遣された.この派遣は,研究計画立案段階では想定されていなかったものであり,また派遣期間中は派遣事業に関連する研究活動を行う必要があったため,当初計画における平成27年度の研究内容を平成28年度へ繰り越すよう,研究計画の変更が生じた.これに伴い,当初は平成27年度で完了予定であった研究期間を1年間延長するよう申請し,承認を得た. 以上の理由より,平成27年度は本研究課題について大きな進捗はなかった.しかしながら,文献調査等は継続して行っており,本研究課題に関連するいくつかの最新の研究報告(実験および理論研究)を入手しており,本研究課題への活用の可能性を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の通り,研究代表者が長期海外派遣により渡米していたため,平成27年度は本研究課題の主だった進捗はなかった.平成26年度の研究計画をおおむね順調に進んでいたため,平成28年度は平成26年度の研究成果を受けて,当初計画における平成27年度の研究計画に沿った研究に着手できる環境を整えている.研究期間の延長理由は想定外の要因による1年間の研究中断であり,研究計画の見直し等によるものではないことから,進捗度の区分は「おおむね順調に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画で平成27年度実施予定であった内容を,平成28年度に実施する予定である.具体的には,実験観察による格子回転と多結晶塑性モデルによる数値解析の比較を実施し,得られた知見に基づく新たな結晶格子回転則の提案する.今後の研究推進における中核として,従来理論の適用可能範囲の明確化と,新たな結晶格子回転則に提案が挙げられる. 平成28年度前半は,平成26年度に構築した解析手法と解析モデルを用いた詳細解析を実施し,報告されている実験結果との定量比較を通じて,従来理論の適用可能範囲を明確化する.平成26年度の検討において,FCC金属多結晶体内において,必ずしも初期方位に対するシュミットファクターが最大となるすべり系が活動するとは限らず,結果的に格子回転方向も古典理論では十分に説明できないことが確認されている.これは,実験的に観察される現象とも整合する.このように,従来理論では十分に説明できない格子回転が発生する条件を,体系的に整理する.これに加えて,複数のすべり系が活動する結晶粒に着目し,2次すべり系における格子回転量が理論予測と一致する場合としない場合を明確化する必要があると考えられる.これにより従来理論が成立しない条件を抽出し,その支配因子(応力等の力学的条件,結晶形状等の幾何学的条件などが予想される)を見出す. 以上で抽出した従来理論が成立しない際の支配因子を考慮し,従来理論の結晶格子則を修正することを試みる.支配因子は力学的因子と幾何学的因子のいずれか,もしくはその両方が考えられるが,これらを結晶塑性モデルの枠組みに合理的に導入し,修正された格子回転則(結晶塑性モデル上では結晶基底の発展式)を提案する.提案した回転則による予測結果を実験結果と定量的に比較し,提案理論の妥当性を検証する.多結晶金属の格子回転機構の解明へ向けた課題を抽出し,本研究課題を総括する.
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Causes of Carryover |
平成27年度は本研究課題の実質的な活動を中断していたため,支出は本研究課題に関連する情報集中のための旅費および講演会参加費のみであった.このため,残額は次年度へと繰り越して使用することとなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額については,当初の平成27年度の予算計画に従って使用予定である.
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