2014 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ液柱の自律形成を利用した高感度検出プローブよる3次元形状計測に関する研究
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26820018
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊東 聡 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00624818)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 計測工学 / 超精密計測 / 表面・界面物性 / マイクロCMM / 寸法測定 / マイクロノズル / マイクロスリット / ナノメトロロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,大気中において測定対象物表面に存在する厚さ数10 nm程度の水膜層によってプローブ先端に自律的に形成されるマイクロ液柱との相互作用力を検出することにより,ナノメートルオーダーの分解能でマイクロ構造物の寸法および形状の高精度に測定可能な高感度プローブの開発を目的とする.当該年度は,水膜層との相互作用を検出可能な高感度プローブの開発と,開発したプローブを用いた測定システムの構築に取り組んだ. 高感度プローブの開発では,マイクロ先端球付きのプローブをスタイラスシャフトの非剛性軸方向に振動させ,プローブ振動の変化から水膜層による相互作用力の検出を試みた.本研究題目では,プローブ振動の共振周波数変化を検出する周波数変調(FM)検出法を採用し,高感度なプロービングを実現できた.プローブ先端球を測定対象物表面に接近/離反させた場合のプローブ周波数変化は非線形な履歴現象を示したことから,プローブは水膜層との相互作用力を検出するために十分な高感度を達成できていると推測される.プロービング精度の実験的な評価では,プローブ振動の周波数変化に基づいたプロービング座標の検出では100 nm以下の繰返し性が確認され,高精度なプロービングが可能であることが分かった. 高感度検出プローブによりマイクロ構造物寸法を測定するために,高精度位置決めステージと組み合わせた測定システムが構成された.構成された測定システムでは,サブマイクロメートルオーダーの測定精度を達成できることが確認された.一方で測定の精度や繰返し性は,測定対象物の表面に存在する水膜層の厚さに大きく影響されることが分かってきた.水膜層の厚さを正確に測定することは,寸法測定の高精度化や安定化において重要な課題であると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では微小球付きプローブにFM検出法を導入することによって,測定対象表面に存在する厚さ数10 nmの水膜層との相互作用力を高感度に検出できることが確認された.プローブ先端球を測定対象表面に接近/離反させた時には水膜層に起因すると推測される履歴現象が観察された.水膜層に起因する相互作用力はナノニュートンからピコニュートンオーダーの極めて微弱な相互作用力であり,これはミリニュートンオーダーの一般的なプローブと比較して十分に小さいことが分かる.高感度検出プローブを用いた寸法測定システムではサブマイクロから数10 nm程度の測定繰返し性を実現できており,研究開始当初に目標としていたナノメートルオーダーの精度を達成しつつある. その一方で,水膜層の厚さが測定精度に影響を及ぼす新たな課題として存在することが判明してきた.水膜層の厚さは,温度や湿度などの測定環境や測定対象表面の物質により変化すると従来研究では報告されており,水膜層厚さの精密な測定は困難であると言われてきた.今後は水膜層厚さの精密な測定について取り組むことにより,本研究題目で開発した高感度検出プローブを用いた寸法測定の精度向上が実現できると期待される. 以上の得られた成果より,本年度の達成度はおおむね順調に進展しており,当初の研究目的を鉄製していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度における本研究題目の取り組みでは,当初の計画通りに測定対象物表面に存在する水膜層との相互作用力検出に基づいてサブマイクロメートルの計測精度を達成することが可能であった.しかしながら,測定精度の向上には水膜層の厚さを測定し,測定結果を構成することが不可欠であることが分かってきた. 今後の研究推進における第1の目標として,開発した高感度プローブを用いて水膜層厚さの測定を行う.プローブの力学モデルを構築し,水膜層厚さとプローブ振動の変化について数値解析を行う.水膜層による振動変化を理論的に検証し,気温や湿度の変化させた場合のプローブ振動変化の測定を行って実験結果と力学モデルとの比較を行う. 第2の目標として,非接触測定による幾何学的な誤差,特にプローブと測定対象表面との間の空間(ギャップ)が測定に及ぼす影響を検証する.また市販のCMMにおける誤差の補正方法を参考にして形状と寸法の補正方法を考案し,測定の高精度化を試みる.既知の形状を有する標準試料の測定結果に対して補正方法を適用する事で,その効果について評価を行う.
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Causes of Carryover |
購入を検討していたディジタルフィルタ回路の仕様と価格に変更があったため,再度購入についての検討を行った.そのため年度内の納品が困難となったため,当該年度内の購入を見送った.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該物品については,再度仕様についての検討を行い,代替品を次年度の初旬に購入する計画である.
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Research Products
(5 results)