2014 Fiscal Year Research-status Report
ガラス基板表面濡れ性のレーザ改質による液滴自己輸送能力を有する表面微細流路加工
Project/Area Number |
26820020
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
青野 祐子 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (20610033)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 表面処理 / レーザ加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,本課題のベースとなる,ガラス表面を効果的に改質するレーザ条件の検討および濡れ性の評価,改質メカニズムの解明を行った.レーザは波長9.3μmの炭酸ガスレーザマーカを使用した.基板は,計画ではホウケイ酸ガラスを用いることを予定していたが,熱によるクラックの発生が生じたため,より耐熱性の高い溶融石英基板を併用して使用することとした. 最初に洗浄のみのガラス基板にレーザ照射を行いその変化について観察した.1.5Wまでの照射エネルギでは表面形状の変化はみられなかったが,水の接触角を測定したところ,接触角の低下が見られた.また,フーリエ変換赤外分光法により水酸基について分析したところ,照射後には水酸基の増加が見られ,この官能基の変化によりに濡れ性が変化したことが示唆された.一方で,処理前のガラス自身の接触角が安定しないこと,処理後の官能基の状態が不安定であり時間と共に機能が消失するといった問題が明らかとなった. そこで,市販のシランカップリング剤を用い,ガラス基板表面を疎水化処理した後に,レーザによる表面改質を行うこととした.シランカップリング剤は二種類用い,それぞれフルオロ基とジメチル基を付与するものである.シランカップリング後の接触角はいずれも90度前後となり,もとのガラス基板に対し大きい値を安定して示した.その後,レーザを照射したところ,レーザの照射エネルギ,走査速度に応じて20~100度までの広い接触角領域を達成することに成功した.また,この改質は1週間以上保持することを確認した.このシランカップリング剤を用いた濡れ性の制御法により,液滴の自己輸送能力を有する流路の形成に成功した.今後,より微細な流路の形成や,マスクレスパターニング法への展開も検討している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りガラス基板の濡れ性の局所制御に成功した.また,計画ではガラス基板にレーザを照射するのみで改質を行う予定であったが,より安定した,かつ濡れ性の制御範囲の広い改質を実現するために,シランカップリング剤を採用しその効果も確認した.改質のメカニズムについてはX線光電子分光法により,詳細に表面の官能基の変化について分析を行い,濡れ性の変化が主に表面の官能基変化に起因する物であることを明らかにした.アプリケーション面でも,単純流路の形成のみならず,27年度に計画していた自己輸送能力を有する流路についても実現に成功した. また,研究結果について,1月にレーザー学会で招待講演を行った.また,来年度9月に機械学会で発表予定,投稿論文についても現在準備中で有り,計画通りに進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
ガラス基板表面での液滴自己輸送能力まで確認したので,次のアプリケーションとして液滴や微粒子スラリーの自己アライメントについて検討する.これは,蛍光性ナノ粒子スラリーを用いることで検討を進め,将来的には流路応用のみならず,マスクレスパターニング技術への発展に挑戦するものである. また,これまでの検討はすべて純水で行っている.マスクレスパターニングも含め,流路デバイスでは多様な液体に対応する必要があるため,今後は液体の種類による効果の違いについても検討を行う.主に有機溶剤やグリセリンを調整した様々な粘度の液体について実験を行う. より微細な流路やパターニングを実現するには,現在の赤外波長ではなく,より短波長のレーザを使用する必要がある.吸収波長の問題により,ガラスでは可視光波長の適用が難しいため,シリコン基板を用い,微細な濡れ性制御についての研究も実施する予定である.
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