2014 Fiscal Year Research-status Report
計算科学シミュレーションを活用した化学機械研磨用スラリーの理論的設計
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26820029
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾澤 伸樹 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60437366)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 化学機械研磨 / 量子化学 / 分子動力学法 / 第一原理計算 / メカノケミカル反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子機器用におけるガラス材料の化学機械研磨による平坦化には、酸化セリウム砥粒を水に溶かしたスラリーが用いられている。セリウムは海外でもごく一部の地域に偏在しているため安定供給が難しく、酸化セリウム砥粒の使用量低減が強く求められている。そこで、計算科学シミュレーションによるセリウムを使用しない新規代替砥粒及び、その研磨性能を向上させるための分散剤の理論的設計が求められている。本年度は、まず代替砥粒のガラスに対する研磨プロセスを検討するために必要な、量子分子動力学法に基づく大規模計算が可能な研磨シミュレーションコードの開発を行った。具体的には、東北大学久保研究室で開発済みのTight-Binding法に基づく量子分子動力学法プログラムにMPIによる並列化処理を施し、計算時間の短縮化を図った。そして、計算負荷がかかるハミルトニアン行列の対角化を中心として並列化することに成功した。今後は、並列化効率を向上させるため、アルゴリズムの改善を行う。また、高い研磨性能を示すスラリーを明らかにするための粗視化分子動力学法シミュレーションで用いるポテンシャルパラメータを決定するため、分散剤であるポリアクリル酸分子の酸化セリウム砥粒上における吸着状態を第一原理計算を用いて解析した。その結果、ポリアクリル酸を酸化セリウム砥粒表面上に露出したセリウム原子上に配置した場合に、13.30 kcal/molと最も大きな吸着エネルギーを示すことを明らかにした。また、表面に露出したセリウム原子とポリアクリル酸間のポテンシャルエネルギー曲線を計算し、Morseポテンシャルにフィッティングすることで、粗視化された分散剤と砥粒間のポテンシャルパラメータを決定することに成功した。今後は、他の砥粒モデルにおいてもポテンシャルパラメータを決定し、粗視化シミュレーションを行うことでスラリー中の分散状態を評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、ガラスの化学機械研磨に用いられる酸化セリウムの使用量低減に貢献するため、酸化セリウム砥粒に対する新規代替砥粒及び、新規代替砥粒を水に溶かしたスラリーの研磨性能を向上させる分散剤について、計算科学シミュレーションを活用して理論的に設計することを目標としている。ここで代替砥粒のガラスに対する化学機械研磨プロセスを検討するためには、量子分子動力学法を活用した研磨シミュレーションが有効であるが、正しく研磨性能を評価するため、より高精度かつ大規模なシミュレーションを行う必要がある。そこで本年度は、研究期間内に大規模なシミュレーションを終了させるため、申請者が所属する研究室で開発したTight-Binding量子分子動力学法プログラムに並列化処理を行い、計算プログラムの並列化に成功した。また、高い研磨性能を有するスラリーの理論的設計を行うためには、粗視化分子動力学法に基づいた、分散剤を添加したスラリー中における砥粒の分散シミュレーションを行う必要がある。そこで、H28年度に予定されているスラリー中における酸化セリウム砥粒の分散シミュレーションを行うため、分散剤であるポリアクリル酸分子と酸化セリウム粒子との反応プロセスを第一原理計算によって検討した。その結果、ポリアクリル酸の酸化セリウム表面上における安定な吸着構造を明らかにした。また、ポリアクリル酸分子と酸化セリウム粒子間のポテンシャルエネルギー曲線を第一原理計算によって計算し、得られたポテンシャルエネルギー曲線をMorseポテンシャルでフィッティングすることで、粗視化された酸化セリウム砥粒とポリアクリル酸分子間の適切なポテンシャルパラメータをH28年度より前倒しで決定することに成功した。以上より、本研究における進捗状況はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、量子分子動力学法に基づく大規模計算が可能な研磨シミュレーションコードの開発を行うため、Tight-Binding量子分子動力学法プログラムコードのMPIによる並列化効率を向上させ、大規模計算の高速化を行う。そして、開発した研磨シミュレーションコードを基に、ガラスの化学機械研磨における化学反応ダイナミクスを解明可能な大規模なシミュレーション手法を確立する。また、実験的にガラス研磨に有効と明らかにされているFe系のペロブスカイト型酸化物砥粒とZr系のペロブスカイト型酸化物砥粒に加え、Ti系のペロブスカイト型酸化物砥粒に対して、砥粒内の金属元素の置換及び不純物の添加が砥粒の研磨性能に与える影響について検討を行う。具体的には、開発したTight-Binding量子分子動力学プログラム及び第一原理計算に基づく研磨プロセスシミュレータによって、上記の砥粒の化学反応ダイナミクス、電子状態ダイナミクス、原子拡散ダイナミクス、化学反応活性を解析する。ここで、これまでの研究において、砥粒による化学反応によってガラスの結合を弱めるためには、砥粒表面に金属原子を露出させ、また露出した金属原子は低価数状態であることが必要であるという代替砥粒の設計指針が提案されている。そこで、提案された代替砥粒の設計指針に従って、砥粒内で置換する金属元素の種類及び添加する不純物の種類を選択し、ペロブスカイト型酸化物を基にした新規代替砥粒の理論的設計を行う。また近年、金属及び金属酸化物ナノクラスターをTiO2ナノ粒子上に担持した砥粒が開発されている。そこで、TiO2表面上に担持したCeO2ナノクラスターのガラスに対する化学反応活性を評価し、ナノ粒子のサイズ等の構造を最適化する。得られた知見より、ガラスの化学機械研磨に最適な研磨砥粒のナノ粒子構造を理論的に提案する。
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Research Products
(3 results)