2014 Fiscal Year Research-status Report
壁面流における乱流発生から発達乱流に至る不変集合の分岐構造と境界クライシス
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26820046
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清水 雅樹 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (20550304)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非圧縮流体 / 乱流遷移 / スペクトル法 / 境界値問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
フランス共同研究者2名,大学院生2名,当研究室の河原教授が主な共同研究者である.本研究の数値計算には課金型(例えば九大の高性能アプリケーションサーバー(HA8000-tc))の計算機を用いて継続的に行った.本研究ではDNS等に用いる数値計算の準備を主にも力を入れて行なった.数値計算の準備では,特に矩形領域内での境界値問題の高速解法に取り組んだ.この境界値問題は矩形管流のDNSを高精度に行う際に遭遇する方程式で,2方向に多項式を用いる離散化を行うため,非常に複雑である.初年度としては,2次元の場合の境界条件が特殊な場合の解法を完成させ,4辺が壁に囲まれた2次元熱対流の問題の数値計算が高精度に行えるようになった.この結果,熱対流問題の解の分岐構造を詳細に調べることが可能となり,熱対流の循環方向のカオス的反転の開始に至る道筋を発見することが出来た.DNSから反転の分岐構造を捕らえたのは本研究が初めてであると考える. また,円管流において,遷移レイノルズ数近傍で観測される乱流パフの分裂のメカニズムについて,DNSを用いて詳細に調べた結果が論文として発行された.さらに分裂の発生頻度に関する研究として,極値理論を用いての解析を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の初年度は翌年度以降で用いる数値計算の準備を行う予定であった.高精度スペクトル法によるDNSと,数値的厳密解を求めてパラメータの変化に伴う解の接続の手法について,おおむね順調に準備を行うことができた.ルジャンドル多項式などの直交多項式によるスペクトル変換において,高速多重極変換を用いての高速変換を行う予定であったが,計算コードの作成に非常に時間を要することと,多項式を用いる方向の自由度が十分に大きくないと,高速変換の威力が発揮されないことが分かり,高レイノルズ数の数値計算が必要になる際に高速変換を取り入れることとした.
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Strategy for Future Research Activity |
円管流や平行平板間流において領域の大きさを充分にとり,カオスアトラクタやカオスサドルが発生するレイノルズ数を求める.遷移流(円管ではRe~2000程度)はカオスサドルで,乱流には寿命がある.従来数値計算では,比較的長い間乱流が持続する初期条件と層流解をの線形結合を用いて,乱流にも層流にも漸近しない状態を求められてきた(シューティング法).この状態を準静的に低レイノルズ数側へと接続することで,カオスサドルの発生(境界クライシス)のRetを求める.Retはその近傍で消滅時間を測定し,代数的に発散する点とする.また,カオスを構成する不変集合の起源を調べる.乱流の分裂過程についても発生のReを求めることを試みる.例えば円管流では1パフの状態から2パフに移り得るようになるReであるが,分裂時間が非常に長いときはパフの消滅時間は短く,分裂時間を直接測定することは困難であるかもしれない.位相空間上では,1パフを表すカオスサドル近傍の点は短時間で層流解へと向かうが,分裂が発生すると2パフ(これもカオスサドル)の状態へ向かう軌跡も発生する.シューティング法を応用し,1パフ状態を長時間持続する初期条件を探査し,2パフ状態に移るかどうかを調べることにする.さらに,消滅時間や分裂時間が定義できる上限も同様に求め,発達乱流への接続のされ方を調べる.
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Causes of Carryover |
九州大学の平成26年度先端的計算科学研究プロジェクトに採用されたため,大型計算機を課金なしで十分に使用することが出来た.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
成果報告や議論のための旅費や,新たな計算資源の確保として使用する.
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