2015 Fiscal Year Research-status Report
壁面流における乱流発生から発達乱流に至る不変集合の分岐構造と境界クライシス
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26820046
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清水 雅樹 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (20550304)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 乱流 / 解の分岐 / 壁乱流 / 機械学習 / 乱流モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
フランス人博士2名(Manneville,Duguet),大学院生2名(金澤,森下),当研究室の河原教授のが主な共同研究者であった.数値計算は主に九州大学の課金型の大型計算機HA80000-tcを用いた.本年度の主な実績は以下の4点である.(1)機械学習を用いて乱流の(数値的な意味で)厳密な低次元力学系の構築法を確立した(清水,河原).十分小さなレイノルズ数の乱流ではあるが,5変数の時間発展方程式で直接数値計算(数10万変数)の時間発展を再現することができ,大幅な計算コストの削減が行えた.高レイノルズ数にも応用できれば,工学的な乱流計算にも非常に重要であると考える.(2)平行平板間流れにおいて,乱流の発生源と期待できる2方向局在乱流を,従来よりも小さなレイノルズ数(Rem=425程度)で得た(従来の下限レイノルズ数はRem=550程度).(金澤,清水,河原)この局在乱流の分岐構造を求めることが出来れば,平行平板間流れでの乱流遷移の問題は解決されるものであると考える.(3)ダクト内流れの乱流2次流れのレイノルズ数依存性について調べた.(森下,清水,河原)昨年度,ダクト内流れの計算法の開発に取り組んだ結果,十分高レイノルズ数の計算が行えた.(4)円管流れでの局在乱流(乱流パフ)の消滅と分裂に対応する物理量について,極値の分布関数を調べた.(Manneville,Duguet,清水,河原)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の(1)と(2)は当初の計画を上回る成果である.まず(1)について述べる.乱流の容量次元は限られており,原理的には有限個の変数で流れが記述できるとされている.当初の研究計画では乱流が発生するレイノルズ数から発達乱流のレイノルズ数にかけて,容量次元つまり乱流の自由度がどの様に増加するのかだけを測定することであった.乱流の自由度がいかに小さくても,乱流のデータを圧縮して低次元の構成方程式を構築することは困難であると考えていた.しかし,近年の機械学習のアルゴリズムの発展により,カーネル分位点回帰やサポートベクトルマシンを用いることで,非常に高速に高精度な低次元方程式を構築できることが分かった.さらに,直接数値計算を高精度に再現できる変数の数を乱流の次元とすることで,本手法から直接的に乱流の次元を求めることができた.(2)については,平行平板間流れにおいて,非常に大きな計算領域で準静的にレイノルズ数を小さくしていくことで,流れ方向とスパン方向の両方に局在した乱流を得ることができた.この局在乱流はほぼ周期的で秩序を保った流れである.このため,この乱流中の不変解を求めることは困難ではないと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
乱流はレイノルズ数の増加に伴ってその実質的な自由度が増加する.工学的に重要な高レイノルズ数の数値計算において,上記で述べた低次元方程式系をどの様に応用できるのかを考える.第一段階としては,孤立した乱流の集団の例を扱い,およそ独立した(弱い相互作用の)低次元系の集団の場合を考える.発達乱流の場合においても,同等な要素(低次元系)の相互作用系と見なせるとすると,本手法は従来の工学的な乱流モデルよりもはるかに効率的な手法になると期待できる.また,平行平板間流れの乱流遷移の問題については,上記で得られた局在解を用いて,その乱流中から直接的に不変解を抜き出すことや,乱流を層流の境界を求めるエッジ追跡を行うことによって,乱流を発生させる解の分岐構造を解明し,種々の遷移レイノルズ数を求めていく予定である.
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