2014 Fiscal Year Research-status Report
希土類添加窒化物半導体の希土類周辺構造制御による高励起効率化
Project/Area Number |
26820113
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小泉 淳 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30418735)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 希土類添加半導体 / 窒化物半導体 / ユウロピウム / 有機金属気相エピタキシャル法 / 赤色発光ダイオード / 半導体物性 / 共添加 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、Eu添加窒化物半導体による赤色発光デバイスにおいて、発光効率を決めている光学活性なEuイオン周辺局所構造への秩序制御を自己形成する「サイト選択ドーピング」技術を確立し、Eu添加窒化物系赤色発光ダイオードの発光効率向上を目的としている。活性層に注入したキャリアの再結合エネルギーをEuイオンが効率よく受け取るために必要な過程として考えられているキャリア捕獲に着目し、有機金属気相エピタキシャル法によりEu添加GaNを作製する際にドナー(Zn)やアクセプタ(O)の共添加を行った。その結果、Eu,Zn,O共添加GaNにおいて、Eu単独添加やEu,O共添加、Eu,Zn共添加では観測されない、新たな発光ピークが観測された。Euイオンの直接励起を利用した詳細な光学特性評価から、新たなEu添加サイトが形成されることを明らかにした。さらに、新たなEu添加サイトは、ZnとOを同時に添加した場合にのみ形成されることから、電子と正孔を捕獲するEu添加サイトが形成されたことが示された。観察された新たなEu添加サイトの低温における発光効率は、従来から観察されている主要な発光サイトと同程度であったものの、温度消光が小さく、p型GaN層のMgアクセプタの活性化に必要な熱アニールに対しても安定であることを明らかにした。また、これらの試料に対してキャリア捕獲と放出を光伝導測定により評価するためのシステムを構築した。従来からの無添加GaNとEu添加GaNの光伝導測定を行ったところ、Eu添加GaN試料において、無添加GaNとは明らかに異なる特徴的な光応答特性が観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、Eu添加窒化物半導体において、Euイオン周辺局所構造の作る準位におけるキャリアの捕獲に着目し、Euとともにドナー(D)とアクセプタ(A)を共添加することで励起効率の高いEu添加サイトを自己形成する「サイト選択ドーピング」技術を確立し、Eu添加窒化物系赤色発光ダイオードの発光効率向上を目的としている。これまでの研究において、Euと共に添加される酸素(O)や、Mg共添加が励起効率の増大に寄与することを明らかにしていたものの、意図的に熱アニールに安定なEu添加サイトが形成されるメカニズムが明確ではなかった。本研究において、アクセプタであるZnとドナーとして働くOを同時に添加した場合にのみ、新たなEu添加サイトの形成が観察され、電子と正孔を捕獲するEu添加サイトが形成されたことが示された。この新たなEu添加サイトの形成は、本研究において計画しているEu添加サイトを自己形成する「サイト選択ドーピング」の狙いのひとつであり、本研究の基盤技術である。また、形成されたEu添加サイトにおいて、キャリアを捕獲するトラップ準位の電気的特性をDLTS測定や光伝導特性により調べる評価装置を作製し、Eu添加GaNに形成されたトラップ準位による特徴的な光応答を得ることができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の成果をもとにして、引き続き「サイト選択ドーピング」技術の確立を目指してZn,O共添加とともに、他にもドナーやアクセプタとなるSiやMgによる共添加による効果を調べる。直接励起による評価とともに、共添加により形成されるトラップ準位の特性をDLTS測定により明らかにする。現在のところ、漏れ電流の極めて小さなショットキー電極の形成が評価試料の作製プロセスの課題である。そこで、pn接合を用いた評価も検討することで、平成27年度の実施計画としている発光デバイスの作製と発光効率の評価をEu添加サイトの評価を同じ試料で行う予定である。
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