2015 Fiscal Year Research-status Report
新規グラフェンTHzプラズモニックデバイスの理論的検証
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26820122
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 昭 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (70510410)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グラフェン / テラヘルツ / プラズモン |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、グラフェンTHzプラズモニック発生器におけるプラズモン不安定性発生原理を中心として解析を行なった。以下に具体的な内容を示す: 1.非対称二重格子ゲート構造を有するグラフェントランジスタにおける、高密度領域の非対称境界条件に起因するDyakonov-Shur(DS)不安定性と、低密度領域の電子集群作用に起因するRyzhii-Satou-Shur(RSS)不安定性の同時発現について、プラズモン周波数および不安定性成長指数のフーリエ変換に基づく抽出法を新たに導入し、解析をさらに進めた。抽出された周波数、成長指数を化合物半導体ヘテロ構造二次元電子ガス内におけるDS、RSS不安定性の解析式と比較することにより、DS不安定性が低密度領域でも起こることにより、より大きい成長指数が得られていることが示された。また、電子散乱レートがより現実的な10の12乗毎秒程度であっても不安定性が発現すること、構造パラメータによって基本モード以外のモードも励起されることが分かった。 2.流体非線形性の解明とテラヘルツ検出器動作の検証を目的として、流体力学方程式に基づく数値計算モデルを構築し、シミュレータ開発に着手した。 3.バンド間反転分布形成によるプラズモン巨大増幅を妨げる要因の一つである、オージェ過程の数値解析を目的とし、線形エネルギー分散の電子間相互作用による補正をモデル化した。 4.グラフェンFETのキャリア輸送特性の解析に関連して、実際のグラフェンFETにおける測定I-V特性に見られる非対称アンバイポーラ特性のフィッティングモデルを構築した。これにより、非対称性がグラフェンチャネル内p-n接合におけるバンド間トンネルおよび熱電子放出輸送によって現れることを示すとともに、実際のグラフェンFETのI-V特性からドープ密度、電子散乱レートを抽出することが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では単ゲート構造グラフェントランジスタに置いて解析を進める予定であったが、より実用化に向いた非対称二重格子ゲート構造グラフェントランジスタにおいて巨大不安定性の発現およびその発生原理の解明をしたことは非常にインパクトが高く、室温動作可能な高出力・単色コヒーレントTHzプラズモニック発生器の実現を推し進める上で非常に意義のある結果である。このことから当初計画を上回る進展と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度も、非対称二重格子ゲート構造グラフェントランジスタにおけるプラズモン不安定性のさらなる解明を続ける。また、流体力学方程式に基づく数値計算モデルのシミュレータを開発し、流体非線形性の解明とテラヘルツ検出器動作の検証を行なう。
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Causes of Carryover |
当初計画していた研究成果発表を次年度に延期することによって生じたものであり、延期した研究成果発表に必要な経費として平成28年度請求額と合わせて使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
スペイン・サンセバスチャンで2016年5月に開催される国際学会EMN Meeting on Terahertzで成果発表を行なう(発表確定)。
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