2014 Fiscal Year Research-status Report
次世代移動体通信基地局用最高性能超伝導トリバンド帯域通過フィルタの開発
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26820126
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
關谷 尚人 山梨大学, 総合研究部, 助教 (80432160)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | トリバンド帯域通過フィルタ / デュアルバンド帯域通過フィルタ / 超伝導フィルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、スマートフォンやタブレットの普及により、映像などのデータ通信が爆発的に増大し、ネットワーク容量の逼迫と周波数資源の逼迫が世界的な問題となっている。これ対して、1、高速・大容量通信と2、周波数資源の効率的利用を同時に実現可能な移動体通信基地局用マイクロ波フィルタの開発が求められている。1、を実現する一つの方法として複数の帯域を同時に通過させるマルチバンド帯域通過フィルタ(MBPF)の実現が求められている。また、2、を実現する方法として超伝導体の利用が期待されている。超伝導体を用いたフィルタはその低損失である特性を生かして、共振器を多段化しても損失の増加を最小限にとどめることができることから急峻な遮断特性を実現することが可能となる。したがって、超伝導MBPFを実現できれば1と2を同時に実現することができる。 そこで、研究代表者は平成26年度の課題として3.5/4.25/5.0 GHz帯を同時に通過する4段トリバンド帯域通過フィルタ(TBPF)の設計、製作、評価を行った。 TBPFは3.5/5.0 GHz帯を構成するデュアルバンド帯域通過フィルタ(DBPF)と4.25 GHz帯を構成するシングルバンド帯域通過フィルタからなる。設計で最も重要になることが各帯域の設計条件を個別に調整できることであり、特にDBPFは一つの共振器で二つの帯域を実現するデュアルバンド共振器を用いているため設計が大変難しい。この問題に対して、研究代表者は独自のデュアルバンド共振器構造を提案し、また、二つの帯域の設計条件を個別に調整可能な新たなDBPFの設計方法を確立した。それによって、3つの帯域を個別に調整することが可能となり、良好な特性を有するTBPFの設計方法を確立した。最終的に、作製した超伝導TBPFは設計とほぼ同等の特性を示し、研究代表者が提案するTBPFの設計方法の有効性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定した4段TBPFの設計、作製、評価は予定通り進行し、設計とほぼ同等の測定結果を得ることができた。 一方、急峻な遮断特性を実現するための8段TBPFの設計では単純に段数を増やしても、共振器間に不要な飛越結合が発生しているため設計条件を満たす良好なフィルタ特性を実現することができていない。この問題を解決するためには飛越結合が小さい新たな共振器構造を考える必要があり当初予定よりやや遅れている。 現在、新たな共振器構造の目途が立ったため、遅れを取り戻せるように努力したい。
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Strategy for Future Research Activity |
トリバンド帯域通過フィルタ(TBPF)を構成するデュアルバンド帯域通過フィルタの共振器構造に問題があったが、その問題も解決の目途が立ったため、平成26年度に確立したTBPFの設計方法を用いて、低損失で急峻な遮断特性を有する8段TBPFの設計、作製、評価を行い、研究目的を達成できるように努める。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定した超伝導薄膜基板であるR面サファイア基板は誘電率に異方性があるため、研究代表者が提案する共振器構造に対して、多段化した際に帯域内の特性に悪影響を及ぼすことが判明した。そのため、サファイアより高額のMgO基板に変更する必要が生じ、設計、作製を再度見直す必要が生じたため、助成金の使用を控えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度はMgO基板を用いて設計、作製を進めるため、MgO基板を用いた超伝導薄膜基板を購入する。また、国際会議に出席するため、その旅費に助成金を使用する。さらに、可能であれば電磁界解析シミュレータのアップグレードに予算の残額を使用できるか検討する。
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