2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26820129
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田原 祐助 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 助教 (80585927)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 味覚センサ / 脂質高分子膜 / 医薬品 / 膜電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療分野において,服薬ノンコンプライアンス(服薬不尊守)が大きな問題となっている.本研究は,服薬ノンコンプライアンスを改善するために,医薬品の苦味を客観的に数値化するための新規味覚センサの開発を目指すものである.味覚センサは,ヒトが各味受容体を有することを模倣し,基本五味毎に対応する脂質高分子膜電極を用いることで,各基本味の識別・味強度の数値化を可能とした世界初・日本初の膜電位計測型のケミカルセンサである.味覚センサの脂質高分子膜電極は,脂質,可塑剤,ポリ塩化ビニルから構成されており,対象物と静電相互作用や物理吸着により膜電位が変化することで味の強度を定量化する. 医薬品の苦味をヒトの官能と一致する新規医薬品用味覚センサを開発するために,1.深さ方向に対する脂質,可塑剤の分布に関する分析,2.脂質高分子膜表面の脂質,可塑剤の分布度合いと医薬品の吸着量の計測,3.脂質高分子膜の膜電位応答と脂質高分子膜の構造との関連性評価の3つの項目について研究を実施した. 実施項目1,2では,昨年度に引き続いてエイジング処理による脂質高分子膜の効果について検証した.実験は,表面ゼータ電位,FTIR-RAS,XPS,接触角測定をおこない,両性イオンによるエイジング処理と脂質高分子膜の特性変化について実施した結果,表面の脂質,可塑剤の分布が変化することや,測定感度が向上する条件が明らかとなった. また,当初の予定を拡大し,人工甘味料による苦味の抑制効果を苦味センサと甘味センサを用いて評価する手法の開発に着手した.官能評価を実施し,苦味物質であるキニーネと人工甘味料の苦味強度の抑制を苦味,甘味センサを用いることでヒトの苦味強度に良く一致する統計モデルを得ることに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請課題の実施項目は,1.深さ方向に対する脂質,可塑剤の分布に関する分析,2.脂質高分子膜表面の脂質,可塑剤の分布度合いと医薬品の吸着量の計測,3.脂質高分子膜の膜電位応答と脂質高分子膜の構造との関連性をおこなうことを予定していた.予定通り実施項目1.2を進め,有益な知見を得た.また,これらの実施項目に加え,人工甘味料による苦味の抑制効果を苦味センサと甘味センサを用いて評価する手法の開発に着手し,官能検査を実施して人工甘味料による苦味抑制効果をよく表現する解析モデルを得ることに成功した.従って,「当初の計画以上に進展している.」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
実施項目3の脂質高分子膜の膜電位応答と脂質高分子膜の構造との関連性評価と,本年度から新たに実施した人工甘味料による苦味の抑制効果を苦味センサと甘味センサを用いて評価する手法の開発について進める予定である.
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Causes of Carryover |
外部機関に機器分析に関する分析委託を行う予定であったが,申請者の所属先で予定していた分析装置を使用することができたため,予定より使用額が減少した.また,官能検査に関しても分析委託を行う予定であったが,関連研究グループ内で実施できたため,予定より使用額が減少することができた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の成果を鑑み,GC-MSを用いた脂質高分子膜の分析が有効であると考えられる.そのため,カラムの購入に使用する予定である.また,NMR測定をおこなう予定であるが,所属機関で進めることは難しいため,外部委託をおこなう予定である.
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