2015 Fiscal Year Research-status Report
医師・患者双方に安心と安全を提供する術中骨折予防システムの開発
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26820160
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
酒井 利奈 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (10383647)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 試作デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
THAにおいて寛骨に設置する臼蓋カップは解剖学的に深部であるため,大腿骨に設置するステムと比較して 3倍多く固定不良が生じる(Callaghan et al, 2004).固定不良と判断した場合,臼蓋カップは寛骨へスクリューを打ち固定することが可能であるが,寛骨の内部には傷をつけると命に関わる臓器が存在するため術者としてはスクリューを打つことは極力避けたい.そこで固定不良を回避するため臼蓋とカップが長期に渡り動くことのないよう,力強くハンマリングをする方法がとられている(Albrektsson et al, 1981).しかし臼蓋カップ周囲には大血管や神経が存在し,力強くハンマリングをすることによりカップ周囲の組織に損傷を与える危険性を抱えている.医療現場におけるこの深刻な問題は,臼蓋カップ設置時に十分な固定性が得られたか否かの判断基準がなく,術者の経験や感覚に依存している点にある.れまで申請者は,対象物の固定性により音程が変化する音響解析に着目し,大腿骨に対するステムのハンマリング音を解析することで固定に対する不具合を回避する技術を発明した.本技術は,ハンマリング音を解析することで,最適な打ち込み回数を知らせ,危険性を回避する装置として企業と共同開発を進めてきた.従来のシステムはPC,センサアンプ,ストレージスコープで構成され,手術室で使用するには機材が多く大型である点が欠点であった.医療従事者にとって持ち運びと操作性の簡便さは、システムを利用する際の重要なファクターとなる。そこで当該研究においては小型システムを開発し、ⅰ)指向性マイクロフォン、センサアンプ、ストレージスコープなどの集音システムを小型化すること、ⅱ)操作を単純化するためのソフトウェアを開発することの2点を、最重要課題として27年度に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
開発した試作デバイスを用い模擬大腿骨を対象にフォルマント周波数を計測した。また新たな対象として、本システムが臼蓋カップのハンマリングにも応用が可能であることを明らかにした。音響を解析することで大腿骨のみならず臼蓋側の非侵襲の診断を可能とし、患者にとって負担のないシステムとなった。今年度の取り組みの中で得られた新知見とそのエビデンスを添付し、改めて新規特許を出願した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の意義は、医師と患者双方にとっての安心と安全を提供することにある。小型システムの開発に成功したことで医師にとって取り扱いやすい科学的根拠に基づいた骨折予防診断技術を構築できた。本研究成果が応用展開された際には、社会に十分に還元でき、有益性も高い。本研究成果によって実用化の見通しがついたため、今後の活動予定として企業と小型デバイスの開発について共同研究を行い、技術移転の可能性を見出したい。
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Causes of Carryover |
学会発表を予定し旅費の計上をしていたが、当該年度に出願した特許申請の新規性を喪失するため控えた。その際の旅費の計上分が余剰となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品が不足しているため、今年度の旅費の計上分を充当する計画である。
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