2015 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子発現ネットワーク解析のための受動性に基づく不安定性理論
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26820163
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井上 正樹 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (80725680)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロバスト性 / 受動性 / 消散性 / 非線形システム / 遺伝子ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子ネットワークで生じるオシレーション現象のロバスト性解明とそのための受動性に基づく理論構築を目指して,本年度は以下の3つの課題に取り組んだ.(1)26年度の成果である線形動的システムに対する解析を非線形動的システムの場合へ拡張した.(2)フィードバックシステムに対する解析を段階的に規模が拡大していくネットワークシステムの場合に拡張した.(3)ネットワークの各サブシステムへ受動性よりも特別なクラスを要求することで,システム全体のロバスト性の向上を確認した.以下にそれぞれの詳細を示す.
(1)非線形動的システムに対する不安定性解析をおこなった.特に,線形システムでは見られない複数平衡点が共存するシステムの解析をおこなった.また,特に細胞の初期化現象を説明する遺伝子ネットワークモデルに解析理論を応用して,現象のロバスト性解析をおこなった. (2)26年度では主に解析の基本となるフィードバックシステムを対象として理論展開してきた.27年度は,遺伝子ネットワークを想定して,より複雑なネットワークシステムに対する理論に拡張した.特に,ネットワークを構成するノード(サブシステム)の数が段階的に増加していくことを想定し,そのもとでの問題設定から理論構築の準備までをおこなった. (3)これまで遺伝子モデルが受動性という性質をもつことを前提に理論展開してきた.27年度は,受動性よりさらに特別なクラスを仮定することで,ネットワーク規模の拡大のもとで,ロバスト性が段階的に向上していくことを示した.この現象と理論的な解析は,細胞分裂のもとで万能細胞が機能を獲得していく現象(分化)を説明するために有益であると考えている.また,制御理論分野としても,ネットワーク規模の拡大による性能向上はこれまでにはない問題設定であるため,まったく新しい理論展開が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
27年度には,26年度の線形フィードバックシステムに対する理論を非線形ネットワークシステムに拡張することを当初の目標としていた.この目的を達成できただけでなく,大規模なネットワークシステムならではの興味深い現象を発見し,その基礎となる理論解析をおこなうことができた.これまでにない全く新しい問題設定であり,今後,非常に重要な研究とできる可能性を秘めたものであると期待している.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である28年度は,非線形ネットワークシステムの不安定性解析の理論展開と,遺伝子ネットワークモデルで生じる現象解析を繰り返すことを想定している.そして,これまでの成果を制御理論分野の基礎理論としてまとめる.また,27年度に新たに得られた成果と課題である「ネットワーク規模の拡大のもとで性能が向上するシステム」の本質を考察することも同時に取り組むべき課題である.
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Research Products
(3 results)