2014 Fiscal Year Research-status Report
東北の鉄道高架橋付属物の安全性評価を目的とした動的解析とそのモニタリング
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26820182
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水谷 司 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10636632)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 鉄道ラーメン高架橋 / 付属物 / 電車線柱 / 地震応答解析 / 耐震性能評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によりJR東日本の新幹線高架橋上に設置された付属物である電車線柱が多数折損した.高架橋本体は土木技術者の管理対象である一方で,電車線柱は土木技術者ではなく電気系技術者の管理対象であり,最近まで電車線柱まで含めた高架橋システム全体の耐震性能評価はほとんど行われてこなかった.3.11の地震後始まった耐震性能を評価する研究では,簡易モデルとして,高架橋と電車線柱を分離した「分離モデル」を使って地震応答解析が行われているが,この手法では高架橋と電車柱間の連成,架線により接続された電車線柱間の連成,RC調整桁で接続された高架橋間の連成などの動的相互作用の影響が考慮されていないことが問題であった.そこで本研究では,独自に開発した三次元骨組み構造解析プログラムを使って,高架橋,電車線柱,架線,調整桁全てをモデル化し,その動的非線形解析を実施した.高架橋本体モデルの妥当性の検証のため,実高架橋に加速度センサーを設置し計測を行い応答を比較検証した.また,電車線柱については,実物大の振動台実験データおよび現地での実物電車線柱の非接触計測センサーにより計測したデータをもとに,パラメーターを同定し実現象をよく再現できるモデルを構築した.このモデルを用いて東日本大震災時に実際に観測された地上の加速度波形だけでなくさまざまな地震で過去観測された加速度を入力し,付属物を含む鉄道高架橋付属物全体の応答特性を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画では,まず鉄道高架橋システム全体を評価できる汎用三次元骨組み動的構造解析プログラムの構築がまず達成すべき課題であり,それについて予定通りに構築が完了し,付属物-高架橋一体構造の耐震性能評価を達成することができた.また,高架橋モデルの妥当性の検証のため実フィールドにおける計測も予定通り実施することができた.計測には,著者が開発を続けているコンパクト加速度計測システムだけでなく,非接触の合成開口型レーダーを使った新たに提案した計測方法も提案し,実施した.コンパクト加速度センサーシステムでは,高架橋の新幹線通過後の加速度波形から多数の高架橋本体の固有振動数をうまく同定し,またレーダーにより高架橋上に離散的に設置された多数の電車線柱の新幹線通過後の応答を捉えることに成功した,これにより実構造物の応答を正確に評価することができた.さらに,本研究では,JR東日本により実施された実物大電車線柱の振動台実験データをもとに,複雑な非線形挙動を示す電車線柱の構造特性を明らかにした.実計測をもとに同定した,高架橋,電車線柱の非線形履歴特性を前述の本研究で構築した汎用三次元骨組み動的構造解析プログラムにより精緻に再現し,それにより実構造物の応答を高い精度で再現できるモデルを構築することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は今年度構築した高架橋-電車線柱モデルをさらに発展させ,対象としている新幹線高架橋が存在するさまざまな地区の地盤の状態をモデルに組み込み,電車線柱が損傷を受けやすい危険個所および安全箇所を推定したいと考えている.さらに,危険個所については電車線柱の損傷を制御する方法まで提案する.方法としては,電車線柱は基礎部分の特性により応答が大きく左右されることが知られており,たとえば免震効果を期待した砂基礎,高架橋本体と電車線柱を剛結するモルタル基礎・アンカー基礎などもっとも振動制御の観点から適した基礎形式について検討する.また,古典的な振動制御の方法として,近年設置,コスト,メンテナンス性で期待されているTuned Mass Damperの可能性についても多角的に検討し,既往の技術に比べて優位であるか高架橋-電車線柱モデルを使って検討したいち考えている.これらの解析は今年度の成果をもとにしているものであり,実施できると状況にある.
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Research Products
(16 results)