2015 Fiscal Year Research-status Report
損傷した実構造物コンクリートのひび割れ面積比による塩分浸透特性評価法の構築
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26820186
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
齊藤 準平 日本大学, 理工学部, 助教 (20349955)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 塩分浸透 / ひび割れ幅 / 塩化物イオン濃度 / 塩分浸せき試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は日本で初めて電気泳動法をひび割れを有するコンクリートに適用し,様々なひび割れを持つ部材の塩分浸透特性をひび割れ幅から求めたひび割れ面積比によって簡便に評価できる式を構築した。本研究の目的は,実構造物に適用できる評価式を構築することである。そのために,ひび割れとひび割れ周辺の部材コンクリートの領域について実構造物サイズの供試体を用いた塩分浸せき試験を実施し,ひび割れから垂直方向への塩分浸透速度を明確にする。そして,その速度とコンクリート表面から内部へ浸透する速度の比αを基に,コンクリート面積の適切な設定値を検討する。 研究実施計画では,上述の塩分浸せき試験において,単一ひび割れに対する次の①~③の因子の影響,①ひび割れ幅の違い,②実構造物の損傷形態を想定したひび割れへの塩分の侵入する方向の違い,③実構造物の損傷形態を想定した加力による損傷の有無について,当該研究期間に検討を行う。 本年度の予定は,①,②の全供試体の塩分濃度分析と,③についての供試体の作製,加力付与,ひび割れ加工処理および塩分浸せき試験であったが,それに対し,①,②の全供試体の塩分濃度分析を実施し,さらに③については浸せき試験だけでなく,予定よりもさらに進めて,全供試体の塩分濃度分析まで実施した。結論は次の通りである。(1)実験によって得られた開放部に対するひび割れ部の塩分浸透比αと塩分侵入方向1方向のひび割れ幅に換算したひび割れ幅wcr*の関係から,任意のかぶり位置や複数方向からのひび割れへの塩分侵入に対応したαの値を設定でき,そのαを用いた提案式から精度の高い評価ができるものと考えられる。(2)浸透するCl-の濃度は,加力付与された場合は,されない場合より高くなる。これは,加力付与によって発生したと推測される内部の微細なひび割れが影響しているものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画では,ひび割れとひび割れ周辺の部材コンクリートの領域について実構造物サイズの供試体を用いた塩分浸せき試験において,単一ひび割れに対する次の①~③の因子の影響,①ひび割れ幅(0.1,0.2,0.4mm)の違い,②実構造物の損傷形態を想定したひび割れへの塩分の侵入する方向(1~4面)の違い,③実構造物の損傷形態を想定した加力(静的(荷重の大きさを数条件設定)・動的(荷重の大きさ・載荷回数を数条件設定))による損傷の有無について,当該研究期間(3年間)に検討を行う。 本年度の予定は,①,②の全供試体の塩分濃度分析と,③についての供試体の作製,加力付与,ひび割れ加工処理および塩分浸せき試験であった。それに対し,本年度は,予定した①,②についての全供試体の塩分濃度分析と,③についての供試体の作製,加力付与,ひび割れ加工処理および塩分浸せき試験よりも進み,来年度実施予定の③の全供試体の塩分濃度分析を行うことができた。当初,危惧していた供試体への加力の付与についても問題はなかった。そして,それによって貴重な知見を得ることができた。このように,当初の計画以上に研究を進められているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画では,ひび割れとひび割れ周辺の部材コンクリートの領域について実構造物サイズの供試体を用いた塩分浸せき試験において,単一ひび割れに対する次の①~③の因子の影響,①ひび割れ幅(0.1,0.2,0.4mm)の違い,②実構造物の損傷形態を想定したひび割れへの塩分の侵入する方向(1~4面)の違い,③実構造物の損傷形態を想定した加力(静的(荷重の大きさを数条件設定)・動的(荷重の大きさ・載荷回数を数条件設定))による損傷の有無について,当該研究期間(3年間)に検討を行う。 平成27年度は,予定した①,②についての全供試体の塩分濃度分析と,③についての供試体の作製,加力付与,ひび割れ加工処理および塩分浸せき試験よりも進み,来年度実施予定の③の全供試体の塩分濃度分析を行うことができた。そして,それによって貴重な知見を得ることができた。 最終年度となる平成28年度の研究実施計画は,③の塩分濃度分析と全研究結果の取りまとめを実施する予定であったが,③の塩分濃度分析は平成27年度に終了したため,全研究結果の取りまとめを行うこととなる。ただし,今後の研究のために,平成27年度に実施した③の全供試体の塩分濃度分析結果において塩分浸透の挙動に特異な現象が得られたことから,それについての要因を明らかにするために追加実験を実施する。
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