2014 Fiscal Year Research-status Report
越流時の堤体飽和度及び粘性土が侵食限界に及ぼす影響を考慮した越流侵食モデルの開発
Project/Area Number |
26820197
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
八木澤 順治 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (70549998)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 粘性土 / 不飽和土 / 限界無次元掃流力 / サクション / 含水比 / 堤防形状 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は,2種類の水理模型実験および数値解析モデルの開発を実施した.実験は,(1)粘性土で構成された堤防モデルの侵食特性の把握,(2)粘性土の含水比・細砂含有率を変化させた移動限界の把握,を実施した.(1)については,複数の堤防形状を有するモデルを作成し,侵食特性の違いを把握した.実験の結果より,堤防の天端が長いモデル形状の場合,耐侵食性が高いことがわかった.その一方で,天端高が長くても裏法面が短い場合,裏法尻からの侵食によって堤体が大きく損壊することがわかった. また,(2)については,含水比(30-100%)・細砂含有率(20-90%)を系統的に変化させた水理実験から,A:細砂含有率はそれほど移動限界には影響しないこと,B:含水比が40%程度の時に最も移動限界が高まり,80%以上となると急激に移動限界が小さくなることを明らかにした.また,この実験より非粘着性材料で用いられる限界無次元掃流力(=0.05)に比べると,含水比が80%以下の場合,約7倍の限界値となることが確認された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の実施項目として挙げていた,(1)粘性土で構成された堤防モデルの侵食特性の把握,(2)粘性土の含水比・細砂含有率を変化させた移動限界の把握,については概ね目標を達成している.しかしながら,当初計画していた越流時の堤体内部の含水比,間隙水圧を計測するには至らなかったため,今年度4月以降計測を開始している状況にある. 一方,数値解析モデルの開発については,堤防越流流れ(鉛直二次元κ-εモデル+VOF法)・河床変動モデル(修正Egiazaroff式,非平衡流砂量式)のカップリングは実施したものの,浸透流モデルのカップリングまでは至らなかった.早急に統合モデルを完成させ,上記(1),(2)の実験結果との比較・検討を可能にする.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は以下の3項目を実施する. 1:開水路に粘性土で構成した堤防モデルを設置し,堤防内の飽和度を変化させた状態で侵食量に及ぼす影響を把握する.その際,サクションが堤体表層地盤の移動限界に及ぼす影響を定量化する. 2:初年度の実験で得られた粘性土の移動限界を用いて一部開発済みの堤防越流侵食モデルの土砂移動パートに組み込み,モデルを粘性土にも適用可能なよう発展させる.改良されたモデルは,実施済みの実験で得られたデータをもとに検証を実施する. 3:上述の成果を総合し,地盤飽和度の変化が堤体材料の移動限界に与える影響,粘性土の移動限界に関する知見を組み込んだ新しい越流侵食モデルを用いて,越流被害軽減効果とその限界を定量化する.その際,実在する現実的な地盤条件を確認の上,特に,1)堤防の材料(粘土含有率,粒度分布等),2)堤防表層の状態(飽和度,締固度等),3)越流条件(越流規模・継続時間),に着目し,越流破堤に対して危険度の大きな要因を明らかにする. また,初年度の実験中の観察より,間欠的に粘性土の流送が激しくなる現象が確認された.これは粘性土表層の移動限界値が時間的に変化することを示唆しており,越流中の堤体内部(特に表層)の含水比・間隙水圧の変化を把握する必要がある.従って,実験で越流させている最中に含水比・間隙水圧の時間変化を計測しながら,初年度と同様の実験を実施する必要があると考えている.
|
Research Products
(3 results)