2014 Fiscal Year Research-status Report
津波・高潮の堤防越流による後背地の氾濫・洗掘評価モデルの開発
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26820199
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下園 武範 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (70452042)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 津波 / 堤防 / 洗掘 |
Outline of Annual Research Achievements |
巨大津波による堤防越流・氾濫および洗掘を予測できるモデルの開発を目的として,平成26年度は(1)基本水理モデルの構築,および(2)モデル検証のための水理模型実験を実施した.基本モデルは,堤防を高解像度グリッドで急勾配地形として表現することで,シームレスな越流・氾濫計算を可能にする鉛直積分型のモデルである.モデル構築上の課題となるのは,堤防によって生じる陸・水境界を含んだ複雑な越流水の挙動を安定かつ高精度に再現することであり,浅水方程式に衝撃補足法を適用することでこれを実現した.モデル検証のために簡単な条件で堤防模型を用いた越流実験を実施し,モデル結果との比較を行ったところ,モデルによる越流量はベルヌーイ定理に基づく広幅堰の越流公式による結果に相当することが示された.越流水深が小さい場合にはモデルと実験結果はよく一致するが,越流水深が大きくなると堤防角部で発生する非静水圧(鉛直加速度)の影響でモデル結果は実験結果を過小評価することが明らかとなった.さらに,モデルを東北地方太平洋沖地震津波による三陸海岸での被災事例に適用したところ,現地での被災状況を良く再現できることが示された.堤防背後の洗掘深を表す指標として局所流速の自乗の時間堰分量を堤防に沿って算出し,津波前後の地形測量データに基づく洗掘深との対応を比較したところ両者には良好な対応が見られたことから,高解像度モデルに基づく面的な洗掘予測につながる可能性を見出すことができた.一方で,堤防での非静水圧の影響は,越流水深が大きい場合には10~20%の越流量過小評価につながることから,より高精度なモデル開発のためにはその影響を考慮することが今後の課題として残された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は概ね達成したことに加えて,現地適用性の検討も実施することができたため上記の区分が適当と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究によって,いくつかの課題点があるものの堤防周辺の水理量は妥当に評価できることが示されたため,今後は堤防背後の洗掘量の評価について研究を実施する予定である.当初の研究計画では,土砂輸送モデルに基づく洗掘深評価を念頭においていたが,流速を用いた簡便な洗掘指標でも現地の洗掘状況を十分に説明できることが示されたため,さらに底質粒径や乱れの影響等を考慮した指標を考案し,越流・氾濫モデルと組み合わせて堤防の洗掘さらにはそれに伴う破堤リスクを評価できる手法へとつなげることを目的として研究を遂行する.
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Causes of Carryover |
生じた次年度使用額はごく小額であり,特別な意図をもって繰り越したものではない.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
小額のため,次年度使用計画に変更はない.
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