2014 Fiscal Year Research-status Report
動的なネットワーク交通流特性を内包した都市スケールの交通状態解析理論
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26820207
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
和田 健太郎 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (20706957)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | MFD / 交通ネットワーク / 動的均衡配分 / スループット / 逆解析 / 交通流 / 渋滞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,都市エリアの交通状態・性能をマクロに表す「Macroscopic Fundamental Diagram (MFD)」(エリアの平均密度と平均交通量)を,よりミクロなネットワーク交通流特性と結びつけて解析する方法論を構築することである.そして,MFDの容量や形状等の特性を特徴づける要素・メカニズムを解明する.具体的な研究手順は以下の3つのステップからなる:(1) 渋滞パターンとMFDを結びつける逆解析手法の開発;(2) 提案手法の感度分析によるMFDの特性分析;(3) 日本の主要都市のMFD特性の実証分析.
初年度にあたる平成26年度では,(1) の手法を,ドライバーの経路選択行動から時々刻々のネットワーク交通流パターンを記述する動的交通量配分 (DTA) モデルに基づき開発した.その結果,エリアのスループット(or 平均交通量)は渋滞したリンクの接続関係を表す「縮約ネットワーク」により特徴付けられることが分かった.また,シミュレーションにより,MFDのスループットの低下やヒステリシス・ループのメカニズムを分析した.現在は,上記の手法で得られたMFD解析式の感度分析により,理論的なMFDの特性分析を進めている.さらに,(当初の予定にはなかったが)経路選択の影響だけでなく,出発時刻選択の影響を評価するために,複数のボトルネックを考慮した出発時刻選択均衡の特性(存在・唯一性)を理論的に明らかにした.
一方,(3) としては,仙台中心部エリアを含めいくつかの都市のMFDの実証分析を進めている.具体的には,数年にわたる長期間データから,日々のMFDの再現性や交通需要条件/供給条件がMFDの形状に与える影響を評価した.今後は,(1), (2) で理論的に得られた知見に基づき,MFD形状と渋滞パターンの関係性について実証分析を進めていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論解析については,平成26年度予定していた (1) について,1起点多終点,多終点1起点の需要を持つネットワークに対して解析を終えている.また,平成27年度に予定してた (2) の感度分析についても,理論的に解析可能な部分については,目処がたっている.また,系統的な感度分析実験を行うための,シミュレーションもすでに作成済みである.従って,研究は順調に進んでいると言える.
実証分析 (3) については,平成26年度は主に対象都市の基本的なデータ処理,基礎集計分析,渋滞パターンの抽出等を行った.これにより,平成27年度に予定している本格的な実証分析を行う準備が整ったことになり,こちらも順調に研究が進捗している.
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年にあたる平成27年度では,(2) 提案手法の感度分析によるMFDの特性分析を早い時期に完了させ,(3) 日本の主要都市のMFD特性の実証分析に進む予定である.(3) については,(3a) 理論的に得られた知見に基づきMFDの特徴的な現象メカニズムを説明する段階と,(3b) 開発手法に基づきMFDの形状を定量的に評価する段階がある.(3a) については,現象のメカニズムを説明するだけでなく,そのメカニズムから考えらえる渋滞制御ルールを構築し,シミュレーション評価を行う予定である.(3b)を達成するためには,多起点・多終点需要を持つネットワークを解析する必要があるが,DTA分野においてもその方法は確立しておらず,困難が予想される.そのため,近似手法や準動的な交通配分モデルを活用するなど,いくつかのアプローチで取り組んでいく予定である.
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Causes of Carryover |
平成26年度の経費は,主に数値計算やデータ処理に用いる数値計算言語MATLABの購入,関連研究者との打ち合わせ・スタディサイトの現地調査・学会参加への旅費,人件費,成果発表のための論文掲載料・英文校正費にあてる予定であった.しかし,研究計画の (1) において,当初の計画以上に理論による一般的な解析が可能であったため,大規模な数値計算実験には至っていない.また,成果を論文にまとめて投稿中であるが,掲載には至っていないこともあり,次年度使用額が生じている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は,当初の計画通り,大規模数値実験のための数値計算言語の費用,実験補助の人件費,および,論文掲載料にあてる計画である.
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Research Products
(12 results)