2016 Fiscal Year Research-status Report
視覚障害者の横断支援性を有する生活道路交通安全施設の実現に向けた実証的研究
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26820215
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
稲垣 具志 日本大学, 理工学部, 助教 (20609945)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 視覚障害者 / 生活道路 / 交通安全施設 / 交差点横断 / 歩行支援 / 安全性確保 |
Outline of Annual Research Achievements |
視覚障害者は屋外における単独歩行において、空間に存在する様々な手がかりを捉えながら移動している。幹線系道路においては視覚障害者誘導用ブロックや音響式信号、エスコートゾーンといった移動支援に特化した設備が比較的多く存在するが、住宅街における生活道路においてはニーズやコスト等の観点から整備が困難な状況にある。生活道路での交差点では、たとえ短距離の横断であっても偏軌による横断動線からの逸脱等が度々発生しており、当事者にとっては心理的負荷の高い環境にある。 本研究では、生活道路での無信号交差点の横断のために、全国各地において普及が進む交通安全施設の活用による支援を想定した実験を行っている。先行研究においては、ドットラインがロービジョン者に対して横断開始・終了位置や横断方向を知る手がかりとして非常に有用であることが認められた。一方で全盲者には現在の仕様のままではドットを杖や足裏で十分に検知することが難しく、表面の加工や突起の取り付けといった対応が求められることが示された。 路面の表面加工や突起は、非優先側道路からの流入車両に対する注意喚起の向上等が期待できる一方で、自転車や車いす、高齢者等の通行障害や騒音・振動の発生といった負の作用も懸念される。そのため、交通安全施設としての機能性を損なわない程度の仕様の検討が必要である。平成28年度は、学内の試験空間において模擬交差点を構築し仮施工したドットラインの表面に、エスコートゾーンと同様の突起と、低めの高さの突起の2種類を取り付け、通過する車いすに与えられる振動について分析した。その結果、エスコートゾーンと同仕様の場合、一般的不快感を示す周波数領域におけるスペクトル値が、ドットラインと平行に進行する場合により高くなることが判明したため、今後、振動の絶対評価を慎重に進めることが必要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度において、大学敷地内に評価実験を実施するための空間を確保するにあたり、各関係部署間の調整が難航したため、実験環境の構築、予備実験の実施、本実験の実施要領の整理と実施準備までの進捗となった。このことにより平成28年度では、評価対象となる道路利用者のうち、車いす利用者を想定した仮想空間実験の実施、ならびに車体振動の周波数特性解析や実験参加者による主観的応答の分析に留まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では、前年度に実施した振動評価の追加的解析と並行して、自転車等の車いす利用者以外の道路利用者を対象として、同実験空間において振動や安全性について評価実験を実施し、データ解析を進めて成果を取りまとめる。また、車いす利用当事者による確認についても可能な限り行うこととする。さらに、実証評価実験に向けて外部協力機関との調整を行いながら、実地における実験環境の構築、評価実験実施ならびにデータ解析を試みる。
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Causes of Carryover |
平成27年度における実験空間確保の調整難航による影響により、車いすの振動評価分析で留まったため、計画において支出予定であった実証評価実験等にかかる額が次年度使用分として発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験空間の追加分析および実証実験により生じる被験者謝金、施工費等に使用する予定である。
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