2014 Fiscal Year Research-status Report
フェールセーフ付剛-滑り型ソフトストーリー機構の開発・研究
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26820226
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古川 幸 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30636428)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フェールセーフ機構 / 剛-すべり支承 |
Outline of Annual Research Achievements |
前世紀の高度経済成長を背景にインフラ・ストラクチュアを十二分にストックしてきたわが国の課題が、今世紀に入って「開発・建設」から「維持・管理」に移行しつつあることは、周知の事実である。 そこで申請者は、「ソフト・ストーリー」型建物に、大地震時の層の過大変形に追従しない剛-滑り機構を柱頭に持つ鉛直力支持部材を層崩壊の「フェールセーフ」(安全機構)として採用する、新しい『フェールセーフ付剛-滑り型ソフトストーリー機構』を,当課題に対する解答の一つとして提案した。本提案機構では、ソフトストーリーを構成する柱を鉛直力支持部材と水平力支持部材に分け、鉛直力支持部材については柱頭と上層部材の縁を切ることでその接触面に摩擦力による剛-滑り挙動を付与する。したがって、本機構を有する建物では以下のような多段階設計が可能になる。 初年度では,この多段階設計を行うのに必要な諸元の検討を行った。多段階設計とはすなわち:(1)中小地震において鋼-モルタル間は剛として応答(継続性の保証),(2)大地震において鋼-モルタル間で滑りが生じ、ソフトストーリー以外の層とソフトストーリーの鉛直支持部材の損傷を抑制(補修性の保証),(3)極大地震において損傷を抑制された鉛直支持部材が「フェールセーフ」として働き、層崩壊を回避(強靭性の保証),である。 また,本機構の耐震性能はフェールセーフ機構を適用するソフトストーリーの力学的挙動がいかに想定通りであるかに大きく依存する。そこで,次年度に当該部分の性能検証を振動台実験で行うべく,その前準備である静的載荷実験の試験体の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までに、初年度に計画した研究を実施するとともに,2年目で実施予定の振動台実験準備を確実に進めている。しかし,限られた期間内で本研究の核となる成果を上げるためにいくつかの修正を加えた。多くは,本研究で最も重要な提案型機構の検証実験の進め方に関するものである。本研究では,いくつかの層剛性と層耐力を変数とした検討を行うために、塑性変形が生じる部材端部を置換可能な引張試験片で構成することで,鋼構造で構成されるエネルギー吸収機構の降伏耐力を制御可能なもの(以下テストフレームと称する)を使用する。まず,計画では初年度から当テストフレーム自体の性能検証確認実験を行い,次年度から解析的に検証した諸元を付与し、本格的に検証を行う予定であったが、研究実施にあたっての効率化のため、初年度を主に解析的検討、次年度を実験的検討とすることとした。また,鋼材とモルタル間の摩擦係数も検討の対象としていたが、本検討だけで非常に多くの時間を費やす可能性が高く、本機構は新しく提案されたものであることから、本機構の最適化に時間を割くよりは、本機構の従来型に対する優位性の検証に重きを置くこととした。したがって、摩擦係数については、鋼とモルタル間に黒鉛を用いることで摩擦係数を下げ、動的に安定させることができるという既往の研究の知見を利用し、この条件下で本機構の性能を制御するための層剛性と層耐力の検討という目的に特化することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、前年度に解析的に得た知見をもとに、提案する機構を適用した骨組を想定した試験体を用いた実験的検討を通して、当機構の利点、問題点の抽出を行う。以下に予定する検討手順を示す。(1) まず,1層2スパンのテストフレームを利用し、テストフレームが所定の性能を保有しているかの検証を、静的載荷実験で行う。ここでの検討項目は,設定と実現された層耐力の比較、層剛性の計測、変形性能の確認に加え、実験時の現象を正確に計測するための、計測位置である。(2) 静的載荷実験によりテストフレームを用いたフェールセーフ機構を有する骨組と、有しない骨組の性能比較検証を行う。本比較では特に層の倒壊を想定した極大地震時におけるフェールセーフ機構の有効性の検証を行う。フェールセーフ機構を有する骨組を模した試験体については,鋼―モルタル間に黒鉛を塗布しない場合と、する場合とで比較を行い、滑り開始後における力学的挙動、動的安定性の検証を行う。(3) 以上の結果を踏まえ、改善が必要な場合には改善案の作成、(2)の検証実験を再び行うことで所定の性能を有する提案機構の実現を目指す。(4) もし(3)に時間がかからなかった場合においては、平成27年度中に振動台を用いた検証実験を行う。こちらにおいてもフェールセーフ機構を有する場合と、有しない場合との比較を行うことで、提案機構の優位性を検証する。
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