2014 Fiscal Year Research-status Report
積雪地域の木造住宅における積雪期の大地震および豪雪による被害関数の構築
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26820232
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
千葉 隆弘 北海道科学大学, 工学部, 准教授 (40423983)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 積雪地域 / 豪雪 / 雪庇 / 地震 / 被害関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,積雪地域における積雪期の大地震や豪雪の際の被害状況を推定し,冬期の防災計画を策定するための基礎資料を整備することを目的としている。具体的には,雪による人身事故および住宅の倒壊・損傷に関わる被害関数を導くとともに,雪荷重が作用した状態にある住宅の被害関数を導くことを目的としている。 平成26年度は,豪雪時における雪による人身事故の実態把握と被害関数の構築,木造住宅における雪による倒壊・損傷に関する被害関数の構築,および振動による屋根雪の動的挙動と構造体の応答性状との関係把握を行った。雪による人身事故の実態把握については,平成24年に豪雪が発生した北海道岩見沢市とその周辺で実施した調査の結果を用い,軒先に形成された雪庇を落とす目的で屋根に上がって雪下ろしを行っていること,地上積雪深の増加に伴い雪下ろしの実施率が上昇することを明らかにした。また,これまでの人身事故の発生件数を用い,地上積雪深の平年比をパラメータとした被害関数を北海道の地域ごとに導き,雪による人身事故と地域特性とその地域の高齢化率の影響を明らかにした。 木造住宅における雪による倒壊・損傷に関する被害関数については,北海道に建築された約100棟の在来軸組構法住宅の図面から小屋梁および垂木の仕様を抽出し,モンテカルロシミュレーションに基づいて被害関数を導いた。その結果,小屋梁の耐雪性能は比較的高く,破壊確率50%の損傷積雪深は2~3mであった。一方,垂木の損傷積雪深が小屋梁に比べて小さくなり,雪庇の形成によって損傷リスクが急激に高まることが分かった。 振動による屋根雪の動的挙動と構造体の応答性状に関しては,屋根雪滑動時の動摩擦係数および粘性減衰係数を考慮することで構造体の応答を適正に推定できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
雪による人身事故に関する被害関数は概ね構築することができ,北海道における人身事故の地域特性と各地域の高齢化率の影響を把握することができた。雪による住宅の倒壊・損傷に関する被害関数については,既存住宅の図面を約100棟収集し,小屋梁および垂木の被害関数を構築できつつある。また,振動による屋根雪の動的挙動を地震応答解析で再現できるところまでこぎつけており,被害関数の構築に向けての準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,雪庇の発達条件を明らかにする必要があり,そのための風洞実験や屋外観測を行う予定である。その際,雪庇の形状を測定する必要があるが,写真測量による雪庇の測定が可能であることが分かっている。この測定技術を利用し,雪庇が発達する気象条件を屋外観測で明らかにする予定である。また,冬期の大地震による木造住宅における被害関数の構築に向けては,収集した既存住宅の図面を用いて耐震診断を行い,被害関数構築に向けての準備を進める。
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Causes of Carryover |
平成26年度は,実験で使用する装置やデータ解析に使用するソフトウェアを購入したが,若干の差額が生じた。また,調査や観測を予定していたが,データ解析のみでも対応が十分できたことから,次年度以降に調査や観測を行う方が効率的であると考えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は,屋外での調査や観測が中心となることから,前年度の差額は,旅費等の費目として効率的に利用する。
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