2014 Fiscal Year Research-status Report
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26820251
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
馬場 雄也 独立行政法人海洋研究開発機構, アプリケーションラボ, 研究員 (60512861)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 都市環境 / 豪雨 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、都市部では豪雨の強度と頻度が増していることが観測結果から示唆されているが、そのメカニズムはよく理解されていない。本研究では山岳部の地形のように比較的大きな地形ではなく、都市構造に代表される人工的でかつ微細な地形(建物群)によって、どのように豪雨が引き起こされるのかを数値シミュレーションによって再現し、明らかにすることを目的とした。 本年度は都市構造を簡易化し、豪雨を再現するための数値シミュレーションモデルを構築することで、都市部で引き起こされる都市型豪雨のように、山岳部の地形に比べて小さな人工的な地形によって引き起こされる豪雨を再現することができた。同時に、理想化されたものではあるが、都市構造に応じて豪雨が強められる傾向も確認された。 シミュレーションデータの解析からは、豪雨が強められるとき、従来の知見とは異なり、都市構造の高度が低いほど、また都市に近い高度の風が弱いほど、雨が強まる傾向が確認された。都市構造の高度が低い時に雨が強まるという傾向は、従来の山岳部の地形高度が高いほど雨が強まるという傾向とちょうど真逆の関係にあり、都市部に特有の傾向であると推測される。雨が強まるメカニズムは複数のプロセスを経て引き起こされるが、主な原因は都市構造によって風が弱められること、および緩やかな雲の形成によってより高い背を持つ積乱雲が形成されやすくなることに原因があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、簡易化したシミュレーションモデルを構築し、気象条件と都市構造の作用の仕方によって豪雨が強まる原因を特定することができた。また、この結果をまとめ、国際ジャーナルへの投稿まで達成した。よっておおむね順調に研究を進展させていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では複数の建物群の影響を見るために、シミュレーションモデルを3次元モデルへと変更する必要がある。シミュレーションモデルの設定自体は問題がないが、建物と積乱雲を3次元的に同時にシミュレーションモデルで解像しなければならないため、多くの計算リソースが必要となることが予想される。このために、現在使用できる計算機だけでなく、外部機関の計算機を追加で利用することで、研究の遅延を防ぎさらなる研究推進を予定している。またデータ解析に大容量ディスクが必要となるので、代表者の所属機関において新規に導入された大規模ディスクを有効利用することで対応する。 研究の最終段階として、事例解析および事例解析を利用した感度解析を予定しているので、実際に豪雨が引き起こされた事例の気象条件データが必要となる。まず、解析に有効な事例をできるだけ早い段階で調査し、海洋研究開発機構で購入・保有している気象条件データを用いることでこれに対応する。
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Causes of Carryover |
平成26年度内に実施する予定であった数値実験を全て実施したものの、その実験結果のデータ解析を行い、現象のメカニズムを特定することに当初の想定よりも時間がかかり、国際ジャーナルへの論文投稿が遅れた。同様に、データ解析の遅れから、国際学会の要旨提出までの期間内に明確な結論を得ることができなかったため、国際学会参加を見送った。以上により、論文印刷代および学会参加費が未使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会参加と国際ジャーナルへの論文掲載料に充てる。
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Research Products
(2 results)