2014 Fiscal Year Research-status Report
学校施設における津波避難プロセスと避難拠点配置に関する基礎的研究
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26820253
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
菊池 義浩 岩手大学, 地域防災研究センター, 助教 (50571808)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 津波災害 / 小中学校 / 避難行動 / 避難場所 / 岩手県 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、地域コミュニティをベースとした避難拠点としての学校施設の機能に着目し、既存施設における防災・減災対策と、安全性を踏まえた学校の配置計画を考究することである。平成26年度は、第一の課題である「岩手県沿岸部における小中学校の津波避難プロセスの実態把握」に取り組んだ。 調査対象は岩手県沿岸12市町村にある小中学校のうち、今次震災で津波災害を受けた36校で、これまでに調査できていない17校を設定した。また、直接被害を受けていなくても避難行動を取った学校を補足するため、釜石市沿岸にある東部地区・平田地区・鵜住居地区・唐丹地区の6校を追加した。同市は震災前から防災教育に取り組んでおり、市街地や漁村集落のなど多様な地域条件でのケースを捉えることができる。その他、震災後に被災校と統合した学校など3校を抽出し、合計26校に対して協力依頼を行った。そのうち、承諾があった17校について調査を実施した。 これまでの調査結果分析から得られた成果として、津波浸水予測のエリアに含まれていなかった学校も被災しており、震災当日に急遽避難先を変更しながら逃げている学校も多いことが明らかとなった。また、児童・教職員・住民がバラバラに避難したケースや、学校が避難所になったケース等、各校における多様な避難行動が明らかとなった。このような結果を踏まえて、緊急避難先の配置方法や校舎・体育館の避難所利用における留意事項等、今後の避難対策について検討した。なお、被災の程度が小さかった学校では、元地で再建しているところもあり、緊急避難場所および避難経路の再設定など、しっかりと防災対策を準備しておく必要がある。 以上、調査結果の取りまとめに予定以上の時間を要しているものの、一定数の学校に調査を実施することができた。津波避難行動の実態をさらに深く捉えたことは、本年度の調査研究による成果と言うことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の調査方法として、震災当時に勤務していた教職員(該当者がいないなどの場合は当時の状況を知る教職員)に対し、インタビュー調査と現地踏査を併用した詳細な調査を実施している。質問がデリケートな内容に及ぶこともあり、対象者の協力を得ることが第一の課題であったが、想定していた程度の学校数を調査できたことは評価できよう。また、研究成果は査読付学術論文や学会発表等で報告している。 その一方、岩手県沿岸の広範な地域をカバーしながら調査を進めること、また、詳細な調査結果を整理するのに時間を必要とした。各校のケースについて報告資料として取りまとめる予定であるが、できるだけ早期に地域社会へのフォードバックを図ることが課題である。なお、東日本大震災の被災地は現在でも震災復興の渦中にあり、被災者の生活再建や地域防災の強化に向けた取り組みに、地元大学の研究者として関わる機会も多い。次年度は本研究に割り当てられるエフォート率を十分に確保し、研究目的の達成に向けて取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は前年度の調査結果の取りまとめを進めつつ、その成果を踏まえて、第二の課題である「東南海沿岸部における小中学校の避難行動および避難空間の計画検討」を進める。中央防災会議が公表した南海トラフ巨大地震の被害想定では、東海地方、近畿地方、四国地方、九州地方が、それぞれ大きく被災するケースの結果が出されている。本研究課題では、各地方における府県のなかから特徴のある地域を抽出し、その沿岸部に位置する小中学校を対象とする。 調査方法として、まず地形図から地勢的な特徴と学校施設の配置状況を捉え(5月~7月)、各校の津波避難計画の策定状況およびその内容に関するアンケート調査を実施(8月~9月)する。また、特に深刻な被害が想定される地域に焦点を当てて、当地の避難環境について現地調査(6月~11月)を行う。 先行的に平成26年度には、防災教育の活動で有名な徳島市立津田中学校に伺い、インタビュー調査および現地踏査を行った。その結果、緊急避難先まで時間が掛かる地点があることや、滞在避難する施設が不足しているなどの問題が捉えられた。このような事実を参考にしながら調査内容を詰めるとともに、交流のある研究者等の協力を得ながら円滑な調査の遂行を心掛ける。 なお、当該年度は最終年度となるため、災害常襲地域における学校施設の避難空間計画および配置計画の視点による、研究成果の総括に向けて取り組みたい。
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Causes of Carryover |
予定していたノートパソコンの購入を次年度に移行したことと、仙台で開催された第3回国連防災世界会議や海外の研究者を招いたシンポジウムなど、国際的な研究発表の機会を国内で得たことが、次年度使用額が生じた大きな理由である。なお、現地調査用のモバイルGPSハンドヘルドを別経費で入手しことで余裕ができたものの、GISの操作・解析用にワークステーションを用意する必要が生じたため、そちらの購入費に充てている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は遠方での現地調査も予定しており、繰り越した分はモデルチェンジ(バッテリー長時間駆動等)したノートパソコンの購入などを予定している。また、現地調査の期間を充実させて研究内容を深めると共に、震災復興に関する研究活動を通して生まれた海外研究者との新たな交流を活かし、当初は想定していなかった国外における事例調査等を組み入れながら、研究課題の展開を図りたい。また、インタビュー調査およびアンケート調査の結果整理作業のため人手が必要であり、繰り越した人件費・謝金も使用する予定である。
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Research Products
(2 results)