2015 Fiscal Year Research-status Report
1950~60年代の公的融資・助成による市街地型賃貸住宅の実績とその計画論的意義
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26820261
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小山 雄資 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (80529826)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 住宅金融公庫 / 中高層耐火建築物 / 住宅協会 / 住宅公社 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、日本国内の既成市街地での住宅供給にかかわる公的な融資・助成制度の整理作業を進めた。制度の歴史的変遷の把握と並行して、事業実績の統計的分析と類型化をおこない、時系列での変化と地域的な差異について考察した。 【1】住宅金融公庫による融資実績の時系列変化と地域的差異の分析:住宅金融公庫が刊行している団体史および年報に掲載されている貸付種別実績表と融資事例写真等を基礎資料として、公庫融資による住宅供給の全体像を統計的に整理・分析した上で、市街地型賃貸住宅がしめる位置づけを明らかにした。また、中高層耐火建築物への融資実績が4大都市圏以外において比較的顕著であった香川県を一例として、高松市内の市街地型賃貸住宅の現況を調査した。 【2】住宅協会・住宅公社による市街地型賃貸住宅の供給実績の解明:住宅金融公庫建設指導部審査第一課が編集した「公社・協会融資住宅建設実績表(昭和25年度~昭和33年度)」を基礎資料として、住宅の種別(賃貸/分譲/産業労働者住宅)・建て方・住宅名称・戸数に関する情報をもとに、当時の住宅地図等を参照して、住宅協会・住宅公社が1958年度までに供給した住宅の所在地を特定する作業をおこなった。当時、全国に存在した住宅協会・住宅公社すべて(75法人)を対象とした。とくに既成市街地における賃貸共同住宅の実績に着目し、都市内における立地条件の分析や分譲住宅の実績との比較を通じて、当時の住宅協会・住宅公社の事業において市街地型賃貸住宅がしめている位置づけを明らかにした。 【3】戦後の都市・住宅政策における国際比較視座の検討:20世紀の都市史・社会史を専門とするマーク・クラプソン博士(ウェストミンスター大学)をイギリスから招聘し、国内事例を現地視察するとともに今後の比較研究の視座を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主題である市街地型賃貸住宅と対比的に考察する予定の郊外型分譲住宅の実態調査および国際比較研究のための研究者招聘が先行して進展したため、当初27年度内に着手する予定であった詳細調査が本格的な現地調査の段階に至っていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
具体的な事例を選定し、住商併用の共同住宅(いわゆるゲタ履きアパート)の建築的特徴の分析を進めるとともに、建設時の共同化の過程とその後の住宅経営の状況を明らかにする。その際、国や地方自治体の技術的・資金的支援、当該都市の都市計画・防火帯指定等との関連性に着目し、当時の社会状況と政策意図をふまえつつ、どのような公共性が見いだされていたのかを検討する。また、所有権や借地権等の権利形態と空間の構成・管理との関係性に着目し、公共と民間の協同・補完関係を具体的に明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
27年度内に詳細調査の対象都市の選定に至らず、現地での調査旅費として想定していた金額を次年度に持ち越したことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度にはこれまでの分析をふまえて対象都市と具体的事例を選定し、現地調査を実施する。
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