2014 Fiscal Year Research-status Report
ベビーカー及びシルバーカー利用者を対象とした公共交通アクセシビリティの評価
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26820265
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
丹羽 由佳理 東京理科大学, 理工学部, 助教 (80586751)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アクセシビリティ / 公共交通 / ベビーカー / シルバーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、ベビーカー及びシルバーカー利用者を対象として公共交通アクセシビリティを評価することを目的に、利用者の物理的バリア、心理的バリアを把握し、公共交通の使いにくさを定量的に示す指標を作成している。平成26年度には、国内外の既往研究レビューを行い、プレ調査を実施した。その後、歩行実験、アンケート調査から得られた結果をもとに地下鉄アクセシビリティ指標の作成に向けた分析を進めている。 具体的には東京都港区を対象として、1)地下鉄23駅の出口から改札までの水平距離、階段の段数、EV及びESの昇降時間について把握し、地上街路については階段、歩道橋の位置、坂道の勾配、歩道幅員について把握した。ArcGISを用いて歩行空間ネットワークデータを作成し、ベビーカー利用者の到達圏解析・最寄駅範囲の分析を行った。分析の結果、到達圏は一般利用者よりも縮小し、EV設置位置や歩道橋の位置によって歪むことが確認できた。2)東京都港区保健所の協力を得て、乳幼児連れベビーカー利用者へアンケート調査を実施した。ベビーカーを使うようになって駅へのアクセスが不便になったという回答が全体の85%を占め、その理由は「エレベーターはあるが設置位置が悪い」という回答が最多であった。3)アクセシビリティの評価は、時間を考慮した場合だけではなく、代謝換算距離を用いた到達圏解析を行い、両者を比較した。その結果、時間考慮と代謝考慮では解析結果に大きな差が生じないことを確認した。 以上より、ベビーカー利用者に関しては地下空間と地上街路を連続的に考慮したアクセシビリティ評価方法を実証できた。しかし、シルバーカー利用者の特性及び心理的バリアについては被験者協力が難しく、調査方法を再検討中である。今後は、6月にプレ調査、8月にシルバーカー利用者の歩行実験を行い、歩行空間ネットワークデータの重み係数を求める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歩行空間ネットワークデータの構築は完了し、予備的なプレ調査及び地下空間調査、地上街路調査は予定通り遂行できた。またベビーカー利用者の地下鉄アクセシビリティに関しては、到達圏解析・最寄駅範囲の分析及びアンケート調査から一般利用者との差を確認できた。しかしながら、シルバーカー利用者については,予備実験として観察調査を行ったものの,被験者確保が難しいかったために行動特性のデータ化が未着手となった.平成27年度は、シルバーカー利用者の歩行実験を中心に実施し、シルバーカー利用者の歩行空間ネットワークデータを作成する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には、研究計画に従い、歩行実験、アンケート調査の結果をもとにしたアクセシビリティ評価指標を作成する。昨年度までに遂行した研究結果については、本研究課題の第一報として日本建築学会計画系論文集へ投稿予定である。今年度は、ベビーカーに加えてシルバーカー利用者が感じる特有のバリアについて明らかにする。 下記に、各計画の具体的な推進方策を述べる。 1)シルバーカー利用者の歩行実験:シルバーカー利用者の行動特性を把握するため、6月にプレ実験、8月に歩行実験を行う。実験で得られた結果から、歩行空間ネットワークデータの重み係数を求める。2)歩行空間ネットワークの構築:昨年度と同様のネットワークデータを作成し、シルバーカー利用者の到達圏解析・最寄駅範囲の分析を行う。ベビーカーとシルバーカーの類似点、相違点を確認する。3)地下鉄アクセシビリティの評価:実験結果及び分析から、地下鉄アクセシビリティを評価する。地下空間及び地上街路を考慮して、目的地までの環境の違いがベビーカー及びシルバーカー利用者へ与える影響について比較する。4)研究のとりまとめ・成果発表:研究成果の内容を吟味し、研究報告書をまとめる。また本研究課題の分析結果は、日本建築学会計画系論文集に投稿する。
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Causes of Carryover |
ベビーカー利用者調査協力者への謝金及び研究補助費として人件費・謝金を申告していたが、東京都港区保健所の協力が得られたことにより無償でアンケート調査を実施することができた。また、研究補助費は筆者が所属する大学研究室の学生の協力が得られたため、使用計画と異なる額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度の予備調査によって,シルバーカー利用者の被験者確保に時間がかかることがわかった.平成27年度は、シルバーカー利用者の歩行実験を予定しているため、調査協力者への謝金及び研究補助費として予算を用いる計画である.
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