2015 Fiscal Year Research-status Report
里親ファミリーホームからみた社会的養護における居住環境計画に関する実証的研究
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26820268
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
加藤 悠介 金城学院大学, 生活環境学部, 准教授 (80455138)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ファミリーホーム / 社会的養護 / 家庭養護 / 居住環境 / 全国的傾向 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会的養護の居住環境のうち、家庭養護のひとつである里親ファミリーホーム(以下、FHと略す)の役割や空間的・運営的特徴について明らかにし、児童養護施設などの施設養護との比較分析を加えながら、養護環境による居住支援のあり方を考察することを目的としている。 本研究活動期間の2年目にあたる平成27年度は、FHが抱える空間的な課題やニーズの全体的な傾向を把握するため、全国にある216のFHを対象にしたアンケート調査を行った。アンケート内容は、FHの概要や委託児童の人数や年齢、空間の使われ方、建物への満足度などである。アンケートは107ホームから返信があり、回収率は49%であった。なお、配布には日本ファミリーホーム協議会の協力を得た。 アンケート集計および分析の結果、以下のことが明らかとなった。1)全体的な傾向として、個人事業者として運営し、4人から6人の委託児童を長期間にわたって養育しているFHが多い。2)FHの建物の特徴をみると、戸建て住宅が多く、平均延床面積は 205.9平米である。所有形態は持ち家が多い。また、開設にあたり改修を行わないFHの割合が高く、それほど高くはない一般的な住宅性能のなかで多くの人数が暮らす状況にあるFHが多いと考えられる。3)養育者が感じる空間の満足度と延床面積の関係をみると、延床面積が小さいと空間への満足度が相対的に下がる傾向がある。特に120平米未満はダイニングとキッチン、子ども部屋に関する項目での満足度が低いことが目立つ。一般的な住宅と比較してFHにおいては、委託児童と養育者との交流空間の充実と、委託児童の自立のための環境整備が住宅性能として求められていると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の目標は、平成26度に実施した事例ベースの調査結果を踏まえて、全国的なFHの傾向をアンケート調査により捉え、共通する特徴や問題点を整理することにあった。 平成27年度はほぼ計画どおりに調査を実施することができた。具体的には、平成27年6月から8月にアンケート調査票を作成し、9月に配布先の調整、10月に調査票の配布、11月に調査票の回収を行った。調査票の配布・回収にあたっては、ほとんどのFHが加入する日本ファミリーホーム協議会の協力を得た。これにより、回収率も49%と高くなり、研究目的に適った十分なデータを得ることができた。しかし、分析の段階において、FHの平面プランの類型化と特徴の整理が不十分であることがわかったため、今後も他の調査を進めながらアンケート調査の分析をより深め、様々な視点からデータの考察を行う予定である。 全国にあるFHの居住環境の状況を把握できるデータが得られ、多面的なデータ分析までは至っていないが、基礎段階の集計分析は終了していることから、現在までの達成度を「おおむね順調に進んでいる」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、これまでの知見にもとづき、FHと小規模児童養護施設の比較調査を実施する計画である。具体的には、平面プランや養育する子どもの属性などが似ているFHと小規模児童養護施設をそれぞれ5つほど選定し、養育者へのヒアリングを含めた現地調査を行い、住まい方の違いについて明らかにする予定である。調査対象を効率よく選定するために、平成27年度に行ったアンケート調査のデータを活用する。住まい方のなかでも、大きな違いが見られると予想され、生活の質にも大きな影響を与えると考えられる食事空間、台所空間の使われ方に着目する。 さらに、子どもの視点からの調査も行う予定である。例えば、FHおよび児童養護施設に暮らした経験のある人に対し、印象深い場面に関するヒアリング調査を実施し、生活記憶を把握することで、物理的だけでなく心理的な側面からも養護環境の相違を明らかにし、今後の社会的養護に必要な環境的要素を整理する計画である。
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Causes of Carryover |
本年度行ったアンケート調査により得られたデータのうち、単純集計による全国的傾向については学会などに報告するレベルまで分析できたが、クロス集計および平面プランの類型化などの多面的分析まで進めることができなかった。そのために、分析ソフトの購入や研究協力者への謝金のための支払いを延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、分析ソフトの購入と調査結果を集計する研究協力者への謝金の支払いを目的として使用する計画である。
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