2015 Fiscal Year Annual Research Report
近代繊維産業施設の保存・再生・活用に向けた調査研究
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26820271
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Research Institution | Research Institute of Shimizu Construction Co. |
Principal Investigator |
平井 直樹 清水建設株式会社技術研究所, その他部局等, 研究員 (50724481)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 産業遺産 / 近代化遺産 / 紡績工場 / 歴史的建造物保存 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、渋沢史料館、東洋紡績、ランカシャーアーカイブズ等において日本の繊維企業に関わる資料の収集と分析を行った。とくに日本の紡績業の成長を牽引した大阪紡績に注目することで、日本における大規模紡績工場建築の始まりと展開のあり方が明らかになってきた。なおこの成果は、今後さらに検討を加えて公表する予定である。また、イギリスにおける繊維産業施設の保存・活用・再生の事例(Masson Mills、Cromford Mills、Belper Mills、McConnel and Kennedy Mills、Salts Mill、New Lanark Millsなど)について現状を調査・確認するとともに、そこに至る経緯などを知り得る資料・文献の収集に努めた。イギリスの繊維産業も衰退が甚だしく、施設をそのまま維持していくには困難が伴う。とくに規模が大きい紡績業施設では、遺産としての価値が高い場合でも、商業利用を含む複合的な施設として活用することで持続的な保存を図っている。新たな用途に適用させながらも紡績業施設としてのインテグリティを維持するため、福利施設や関連施設も含めて継承し、動力機関や紡績機械などの動態的保存あるいは復元的展示や案内によって元来の役割が認知できるように配慮されている。文化財的価値を損なわない改修手法については従来の建築保存の考え方が基本となっているが、各時代の正当な貢献を尊重する姿勢についてはデザインのオーセンティシティを重視する近代建築の保存よりも徹底されていることが確認できた。それに比して、日本の繊維産業施設においては断片的な保存・活用が目立っており、福利施設や関連施設も含めた生産システムの構成を理解し、機能的、空間的、時間的な全体性を継承していくという点に課題があることが明らかとなった。
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