2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26820275
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
齋藤 潮美 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員 (40708749)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ベトナム / フエ / 世界遺産 / 漆 / 建築装飾 / 塗装 / 復原計画 / 国際協力 |
Outline of Annual Research Achievements |
フエの歴史的建造物群内には、建築装飾、祭祀用具、美術工芸品などに多くの漆塗り技術をみることができ、これらは前近代の伝統塗装技術を知ることのできる貴重な資料となっている。漆とは、ウルシ科ウルシ属から滲出する液で、そのまま放置すると被膜を形成して塗料となるものを指す。現存する遺構への塗装は、過酷な自然環境下で塗膜の劣化が著しく進行し、近年以前の状況確認が難しくなりつつあることに加え、フエ遺跡保存センターによる近年の修理を除き、修理年代、技法、用材などの詳細はあきらかではない。 本研究課題は、フエ遺跡保存センター協力のもと、これまで行った研究成果の整理と、建築装飾保存担当の若手技官らとともに、継続的な現地調査を行うことによって、専門技術の移転や知識の共有を図ることを目的とした連携を推進することに加え、材料・工程・技能に関する調査、塗膜の化学分析、文献研究や熟練技能者からの技術指導を通じて、勤成殿の建築塗装設計方法に関する研究を前進させ、柱の下地から上塗りまでの塗装工程案と仕様書案について、復原的に考察を試みるものである。 本年度は、阮朝期(1802-1945)の最高水準の伝統的建築塗装技術を考察する上で、最も重要な現存遺構である太和殿に加え、午門、思陵・凝禧殿の古式塗膜に関する分析を優先的に行い、伝統技術の分析成果の蓄積を試みた。また、伝統的建築塗装設計技術に関する既往研究の整理、材料に関する文献の収集、工程手板案作成の準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究と同様に、フエ遺跡保存センター協力のもと、伝統的建築塗装技術に関する分析を試みた。 本年度は現存遺構の古式塗膜の化学分析などを通じて伝統的な材料に関する考察と、材料に関する文献の収集を優先して行い、現地調査については、調整中である。午門、凝禧殿柱の古式塗膜の分析より、使用材料の一部が明らかになった。 本年度の成果の一部は、平成27年度日本建築学会大会学術講演梗概集(関東)へ投稿が終了し、口頭発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請時の計画に基づき、おおむね順調に進展している。本年度は、伝統的な塗装材料に関する基礎的な研究資料の作成と文献資料の収集を優先して行った。次年度は現地調査を調整した上で、工程手板案の作成と、実施内容の概要をまとめたポスターの作成を試み、研究成果の公開と発信を目指す。
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Research Products
(2 results)