2016 Fiscal Year Research-status Report
江戸時代の賀茂別雷神社遷宮に及ぼした公武権力の影響と修理の実態に関する研究
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26820277
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Research Institution | Kyoto Seika University |
Principal Investigator |
小出 祐子 京都精華大学, デザイン学部, 講師 (50593951)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 上賀茂神社 / 賀茂別雷神社 / 造営 / 遷宮 / 江戸時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、江戸時代の賀茂別雷神社(上賀茂社)において、古儀の復興と共に伝統や由緒を強く打ち出した神社のイメージが形成されていく過程を、公武権力の影響のもとで展開した当社の遷宮(造営)を通して考察するものである。2016年度には、幕府の倹約政策のもとで行われた江戸時代中後期の造営における公武の関与をあきらかにするため、延宝度以降幕末までの造営(延宝度、正徳度、寛保度、安永度、享和度、天保度、元治度)の社記録から関連記事の拾い出しを行った。その結果、上賀茂社の造営については認可の遅れだけでなく、その執行に関わる下賜金も減じるという幕府の方針が確認された。たとえば造営に関わる雑用銀は、寛保度から安永度、享和度造営にかけて3割の減額を命じられ、次の天保度にはさらに減額を命じられた。加えて天保度造営の入札では、落札額よりも少ない金額をもって造営を行うよう上賀茂への指示があった。こうしたことから、江戸時代における当社の施設は次第に簡略な仕様に変更される傾向にあり、とくに社殿以外の諸舎屋でそれが顕著だったことがわかった。一方、そのような公儀の姿勢に対して神社側は抵抗し、旧規を守ろうとする動きもみられた。 また本年度は、これまでに進めてきた研究成果の一部をまとめ、「江戸時代における賀茂別雷神社の造営について」(京都府文化スポーツ部文化政策課編『平成27年度京都府域の文化資源に関する共同研究会報告書(洛北編)』2016年11月)、「江戸時代の賀茂別雷神社と造営」(京都学研究会編『京都を学ぶ【洛北編】―文化資源を発掘する―』2016年12月)において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績の概要で述べたように、本年度は幕府の倹約方針のもとで行われていく江戸時代中後期における上賀茂社の造営について、公武がどのように関与したのかを社記録から検証した。本作業により、江戸時代最初に行われた寛永度造営が、当社に関わるほぼすべての境内及び境外の建築を一新する大規模な造営であったのに対し、以降の造営では時代と共に予算の減額を求める公儀の動きが確認された。その影響は社殿よりも、舎屋など社殿以外の施設の修復に際し仕様を簡略化するというかたちで現れたことがあきらかになったが、その具体的な検証は十分に進んでいない。今後は社殿以外の施設の修復や、復興された古儀との関わりについて、さらに考察する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
江戸時代における上賀茂社の建築は、幕府の倹約を旨とする方針のもとで、造営を重ねるに従って仕様が簡素化する傾向にあったが、それは社殿よりも舎屋の建築に顕著であったことが確認された。すなわち、当社の造営に関する公武の影響をあきらかにするためには、社殿だけでなく舎屋の修復実態にも注目する必要がある。よって今後の研究を推進するにあたり、舎屋の修復記録の整理作業を進めることが課題となる。あわせて、江戸時代に当社で再興された様々な年中行事や神事に関連する新史料の渉猟につとめ、これらの実現のために上賀茂社がとった伝統や古格を強調して公武と連携する動きと、造営活動との関連について考察する。また、研究最終年となることから、研究成果のとりまとめ、公表に向けての準備をすすめる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、研究内容の大幅な修正あるいは変更に基づくものではなく、本年度に予定していた史料渉猟の日程を確保できなかったことによる。そのため、関連する国内旅費、資料複写費の年度内執行を見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の未使用額は、今年度の執行を見送った関連史料の渉猟に要する複写費、旅費等に支出する。また、新たに収集した史料に基づく研究考察のために必要な関連図書、研究成果発表に要する学会参加費、旅費等にかかる経費を研究費未使用額から充てることとしたい。
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Research Products
(2 results)