2014 Fiscal Year Research-status Report
格子熱伝導過程におけるフォノンの集団的振る舞いの解明
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26820284
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東後 篤史 京都大学, 構造材料元素戦略研究拠点ユニット, 特定准教授 (10610529)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フォノン間相互作用 / 格子熱伝導 / 平均フォノン線幅 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一原理非調和格子力学計算を用いて閃亜鉛型構造とウルツ鉱型構造の66種の結晶に対しフォノン間相互作用強度、フォノン緩和時間、格子熱伝導率を計算した。 格子熱伝導率計算の結果から、結晶構造ごとに格子体積と格子熱伝導率に強い相関があることを示した。フォノン緩和時間の逆数(フォノン線幅)をフォノンバンド構造上に可視化し、フォノン線幅分布の特徴を調べ、フォノン線幅がフォノンバンドに沿って滑らかに変化しないことがわかった。この理由を調べるために、波数ベクトルとエネルギーの軸に対してフォノン自己エネルギーの虚数部の強度分布を描いた。その結果、フォノン自己エネルギーの虚数部は波数ベクトルに対する依存性は弱いが、エネルギーに対してするどく変化することがわかった。このような振る舞いの主な原因は、3体のフォノン間のエネルギーと波数の和の2つの保存則によることを明らかにした。 フォノン線幅の物理式の中では、フォノン間相互作用の保存則と相互作用強度がからみあっているが、相互作用強度を仮に定数とした場合に、格子熱伝導率を系統的に予測できなくなった。これは、フォノン間相互作用の詳細が、3体のフォノンの保存則と同様に複雑であることを示しており、従来からよく利用される簡素なモデルでは、格子熱伝導率を系統的に予測することが非常に難しい、ということを示している。 以上の結果から、フォノン間相互作用が本質的に複雑な現象であり、新しい視点からフォノン間相互作用の物理モデルを考える必要があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多様な結晶に対して行った系統的な計算から抽出したデータを可視化することで、フォノン間相互作用の振る舞いの特徴を見つけた。初年度の結果から、フォノン間相互作用が簡単な形をしていないということが示されたが、これは従来のフォノン間相互作用の簡素なモデルは本質的に表現力に乏しいことを示している。一方、本研究において閃亜鉛型構造とウルツ鉱型構造の結晶に対して、フォノン間相互作用を特徴づける物性値を探す試みを行っており、比較的簡素なフォノン間相互作用のモデルを用いながら、平均線幅を再現するための研究が順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
フォノン散乱過程の別の切り口からの可視化および解析方法を探し、フォノン間相互作用モデルの構築にフィードバックする。特に閃亜鉛型構造とウルツ鉱型構造以外の多様な構造の結晶に対しても、第一原理非調和格子力学計算結果の解析を行うことでフォノン生存時間を多様な結晶系で系統的に予測可能なフォノン間相互作用のモデルを構築する。モデルを実用的にするために、格子熱伝導機構に関わる重要な因子を探し、そこからモデルに用いるパラメータの抽出を行う。
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Causes of Carryover |
京都大学の大型計算機システムを利用することができた。同じ使用額を計算機購入に使うのに対して、この大型計算機の計算能力ははるかに大きい。そのため第一原理計算を行うための計算機の購入の必要なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
フォノン間相互作用を分析・可視化するための計算機を購入する。 成果発表のための出張費に用いる。
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Research Products
(2 results)