2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26820307
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野村 和史 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90397729)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミグアーク溶接 / 金属蒸気 / 非軸対称 / 分光 / トモグラフィ / 干渉フィルタ / スプレー移行 / グロビュラー移行 |
Outline of Annual Research Achievements |
アーク溶接プロセスは未だ完全な制御下にはなく,最適な溶接プロセス,設定条件の選定は非常に困難で多大な労力を要するのが現状である.これは溶接プロセスの熱源特性がまだ明らかになっていないことが原因の一つである.これに対し,アークプラズマに非接触で擾乱を与えずその特性を計測することができる発光分光法が広く用いられる.その多くは,現象の軸対称性を仮定し,一方向から計測する二次元的(r,z)な手法である.しかし実際には,電極を傾斜させる,複数の電極を用いる,消耗式電極を用いる場合はそもそも軸対称性を保つのが難しいなど,三次元的(x,y,z)な現象も多い.本研究では,そうした三次元現象かつ非定常な現象を捉えることができる多方向同時分光計測装置を構築した.著者らはこれまでに2電極TIGアークなどへの適用結果を報告してきたが,本年度は,MIGアークの計測を試みた.シールドガスとしてのAr,金属蒸気としてFeの挙動を同時に観察するため,二種類の干渉フィルタを用い,各4方向,合計8方向での観察を行った.電流を大きくするとアーク及び溶滴の挙動はグロビュラーからスプレーへと移行する.本実験では,スプレー移行(295A)ではアルゴンプラズマも鉄蒸気プラズマもリング形状となるが,グロビュラー移行(175A)では不安定な非軸対称分布を形成した.本研究における三次元分光計測の結果によると,一見規則性のない分布であるグロビュラー移行は,スプレー移行における軸対称系からFe軸よりもAr軸の方が大きくずれたような現象であることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては,発光分光計測に用いる線スペクトル強度の面情報を取得するため,CCDカメラと干渉フィルタのセットを用いる.またトモグラフィによる断面の再構成を行うために,この検出器セットを複数用いている.これまでは全ての検出器が同じ構成,すなわち単色多方向同時計測装置であった.当該年度においては,当初の予定どおり,別の干渉フィルタを選定することでこれまでの単色から多色多方向同時計測へと展開できた.この結果,金属蒸気が顕著に生じるMIGアーク現象における非軸対称現象を捉えるに至っている.計測対象についてはTIGアークからMIGアークへの展開であったが,金属蒸気が多く出るために変化が捉えやすいMIGアークからの適用となり,順序が逆転してしまったが,大きな問題ではないと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
現状,MIGアークの多色多方向同時計測が出来てはいるものの,結果としてわかるのは発光量であり,具体的な物理量への変換が出来ていない.これには比較的精度の高い分光器によるスペクトル分布結果を発光分光理論に照らし合わせ,最適な理論展開を行う必要がある.類似研究においていくつかの方策が行われていることもあるが,本研究で行う三次元計測には新たなステップが必要である.今後はこれを踏まえ,計測結果の定量化を行う. また,この過程においてTIGアークの基礎的な分光を改めて行う必要もあると考えられる.その結果に付随して,当初予定であった非軸対称TIGアークにおける金属蒸気の挙動や分光計測における干渉フィルタの種々影響を調査,報告する予定である.
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Causes of Carryover |
支払請求額に対して残額は0.015%である.一円単位の細かな消耗品による使い切り処理を行わなかったため生じた金額であり問題はない.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定に252円が加わったのみであり計画に問題はない. 引き続き干渉フィルタといった光学部品等に使用する計画である.
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Research Products
(7 results)